「まぁ……嬉しいわ。私もなんです。どうも男性とか苦手意識があって。前も。
いえ……今も嫌な思いをしたことがあるんです」と打ち明けた。

「えっ? どういうことですか?」

「……聞いて頂けますか? 佐々木さん」

 俺は、目をウルウルさせながら佐々木慶一を見た。自分でもよくやるなと思った。しかし思ったより効果があったのか食いついてきた。

「もちろんです。俺に出来ることなら協力させて下さい」

「実は……最近ストーカーに悩まされているんです。犯人は元カレで、以前お付き合いした時は、異状な嫉妬に悩まされていて。それから別れても未だにしつこく電話してきたり尾行して困っています」

 佐々木慶一にわざと嘘の情報を流した。警察と名乗っているのなら、見過ごす訳にはいかない。それに上手くやれば謝礼金ぐらいは貰えると思うはずだ

「こんなことを刑事でもある佐々木さんしか相談が出来なくて。両親にも心配かけたくないし。お願いです。私を守って下さい。お礼ならします。両親も娘のピンチを救ったとなると感謝して結婚資金とかお礼金をたくさん出してくれるはずです」

 あえてお金をチラつかせる。詐欺師ならお金を貰える話に飛び付くはずだ。
 しかもお礼金なら、なおさら。すると佐々木慶一は、何を思ったか
俺をギュッと抱き締めてきた。えっ?

「相沢さん。いや、加奈子さんと呼ばせて下さい。こんな辛い想いをなさっていたなんて。俺に任せて下さい。俺が絶対あなたを守ってみせますから」

「まぁ……嬉しい」

 やめろ。男に抱き締められるなんて気持ちが悪い。あまりの気持ち悪さにゾゾッと鳥肌が立った。しかし、どうやら俺の言った嘘を信じたようだ。
 まぁこの男にしたら真相なんてどうでもいいのだろう。お金が騙し取れれば……。

 とりあえず上手く行った。帰りに送ると言われたが、女友達が泊まる約束をしているからと言い断った。
 あんなボロアパートを教える訳にはいかないし、正体がバレたら大変だ。だが食い下がらない佐々木。あんまり断ると怪しまれるか?
 じゃあ……駅までと言い何とか納得してもらう。そこで別れればいいか。
 バーの会計を済ませると一緒に駅まで歩いた。六本木も賑わいが夜になるとネオンが輝かせ大人の雰囲気を漂わせる。外国人やお酒を飲んだおじさん達も歩いていた。あぁ早く帰りたい。