「くっ~やっぱり神崎さんのカレーは旨い」

「それは、どうも。それよりも、このまま連絡をやり取りして何度か会うチャンスを作れ。その内に自分から理由をつけて金をせびるはずだ」

「えっ? あ、はい。でも……また女装するの嫌だな」

 お冷を入れながら、そういう神崎さんに驚いたが……また変装をするのかと思うと憂鬱だった。思わずため息を吐いた。
 情報を聞き出すために必要なのは分かっているが、あんなの一度きりでいいのに。

「心配しなくても上手くやっているぞ。それになかなか似合っているし」

「全然嬉しくないですよ。似合っているなんて」

 神崎さんは、他人事だからそう言うが、男としてのプライドが傷ついてしまう。
 俺は、もう一度ため息を吐きながら、またカレーをひと口食べる。
 すると神崎さんは、何か考え込みながらニヤリと笑ってきた。

「しかし今度は、刑事と言ってくるとはな。逆に使えるかもしれないぞ」

「えっ?」

 何だかまた嫌な予感がする。俺は、言われる前に帰ろうと慌てて残りカレーをかき込んだ。そして食べ終わると席を立とうとする。

「さて、そろそろ帰りますね。もう遅いし」

「待て。話は終わってないぞ? 立花。お前には、まだやってもらいたいことがある」

 や、やっぱり。ニヤリと何かを企んだような微笑み方をする神崎さんに、俺は悪い予感しかしなかった。
 結局の話はこうだ。俺がより親しい関係になるように佐々木慶一に悩みを打ち明けるふりをしろと。
 そうすれば相手がボロを出すか、より謝礼金や何かとお金を要求するだろうって。
 お守りだと安全祈願のお守りまでくれた。ちょっと待て。お守りくれるほどのヤバいバイトって事じゃないか。近づくほど俺の方がピンチになるじゃないか?

 女装がバレるのもだが、いろんな意味で。
心配そうに神崎さんを見るがは、ニコッと笑って圧力をかけてくる。行けと無言で訴えていた。結局行くはめに。トホホッ……。

 翌朝。俺は、ため息を吐きながら大学の抗議を受けていた。うーん。どうしたらいいのだろうか。そう思いため息を吐きながら、もう一つのPCウォッチを見ると反応があることに気づく。