従業員だろうが常連客だろうが、この問題に答えられないと中に入れてもらえない。あ、思い出した。煙草屋のお菊さんだ!
 駅前にある煙草屋なのだが他にも駄菓子や日用品も売っているお店で、そこに住んでいるお婆ちゃんは確か今年で98歳になるはず。
 俺は、答えが分かると慌てて店の中に入って行く。カランと鈴の音が鳴るとコーヒーのいい香りがしてきた。
 レトロな雰囲気の造りになっており落ち着いた空間。      
 客席も少ないが、ここのコーヒーと軽食が美味しいため隠れたリピーターも多い。
 ただし問題が答えられないと入れてもらえないのが難点だが。

「問題の答えは?」

 中央のカウンター席になっているキッチンで、そう質問してくるのは、店長兼オーナーの神崎桃哉(かんざきとうや)さんだ。
 黒髪で後ろが少し長い髪を結んでおり長身。年齢は、教えてくれないが20代後半ぐらいだろうか。若く、何より切れ長の目に鼻筋も高く整った顔立ち。
 芸能人でも十分に通りそうなイケメンだ。しかし性格に少々問題はあるが。

「煙草屋のお菊さんです! 今年で98歳」

 俺は、ハッキリとそう答えると周りの常連客。
 と言っても3人ぐらいだが、その人達がおーと言いながら拍手をしてくれた。
 どうやら正解だったみたいだ。ホッと胸を撫で下ろすと神崎さんは、クスッと笑ってきた。

「よし、時間も間に合ったようだな。立花」

「毎回勘弁してくださいよ……この質問は」

 何故従業員まで……?
そもそも常連客まで入れて問題に答えないと中に入れないシステムがよく分からない。
「コーヒーも軽食も美味しいのだし、もっと気軽に入れるようにしたら人気が出るのに」と俺が不思議そうに呟くと神崎さんは、クスッと笑う。

「いいだろ? 面白くて。それに、これぐらいしないと客が増えてしまうからな。手っ取り早く追い払うには丁度いいだろ?」

「いや。追い出してどうするんですか?」

俺は、思わずそうツッコんだ。神崎さんは、どうも営業する気があまり感じられない。そもそもそれでよく経営が続けられるもだ。