「警察何やってんだ? まったく役に立たないなぁ……」

 瀬戸さんは、必死に彼女に同情して怒るが、あなたも警察官ですよね? とツッコミたくなった。しかし警察が、それだと困ったな。
 被害が多いのに証拠も無いなんて。うーんと悩んでいると神崎さんがため息を吐いた。

「警察はともかく。証拠がないなら、こちらから餌をまくしかあるまい」

「餌をまくってどうやって?」

 俺は、神崎さんにそう尋ねてみるが、何だか嫌な予感がする。こういう時は、ろくなことがない。すると神崎さんは、俺を見るなりクスッと笑った。あっ……やっぱり。

「立花。お前……女装してその婚活パーティーに参加して来い。そして岡原慶一に近づけ」

 はい? 何で女装?
 婚活パーティーに参加して来いは分かるけど、何で俺が女装をしないといけないんだ? 神崎さんの爆弾発言に唖然とする。

「いやいや。ちょっと待って下さいよ? 婚活パーティーに参加だけでいいじゃないですか? どうして俺が女装なんか」

「婚活パーティーに参加してもお前が男だと、声すらかけにくいだろーが。あの男の目的は女だ。心配するな。お前は、背も男にしては小柄だし顔も童顔だからメイクで、いくらでも誤魔化せる」

 いやいや。そういう問題ですか? 何冷静に俺の分析をしているのですか。いくら顔が童顔でも絶対にバレる。

「無理ですよ。女装だなんて、俺嫌ですからね?」

「もしやったら……そうだな。今月の給料を上乗せしておいてやる。これぐらいならどうだ?」

 神崎さんは、そう言うとパッと近くにあった電卓を取り出して打つと俺に見せてきた。うっ……そんなに!?
 思わず心が揺らいだ。それだけあれば生活に助かる。しかし女装だ。バレたら終わる。でも……。

 結局、散々悩んだ挙げ句俺は、渋々引き受けることになった。まさか、こんな事で女装をするはめになるとは……トホホ。
 そして俺は、婚活パーティーサイトに登録する。名前は、藍沢加奈子(あいざわかなこ)23歳。