いくらなんでも警察は、気づかないものか?

「赤薔薇会は、頻繁にロッカーの場所を特定が出来ないように常に変えている。それに遠くから見たら自分で封筒をロッカーに入れて自分で回収しているようにしか見えないしな。まさかもう1つ入っているとも、後で回収されているとも思わないだろう」

「それにミキとも個人的に接触がないし、気付かれにくい。もし気付いたとしても怪しいだけで証拠があるわけでもない。もし無理に取り押さえたとしても赤薔薇会が用意したBは、いいように口車に乗せられた一般人。Aも赤薔薇会の部下としても利用されただけだろう。赤薔薇会の情報を何一つ持っている訳ではない。つまり損をするのは、あくまでも篠田だけだ。邪魔になったら口封じされるだろう」

 そ、そんな……!? じゃあ赤薔薇会は、篠田に薬を売らせるだけ売らせて、いいように切り捨てる気だったのか? なんて酷い話だと俺は思った。

「じゃあ……捕まえても意味がないと?」

「いや。AとBには情報がないだけだ。だがミキには何かしら関係性がある。篠田に赤薔薇会の情報を漏らしたのも彼女だろう。篠田は、金の欲しさに赤薔薇会を通さずに薬に大量に手を出そうとした。見つかったら何割か払わないといけないからな。それが漏れて警察に関係性に気づかされた。つまり……ミキを見張れば赤薔薇会の事が何か分かるかもしれない」

 ミキさんを殺しに!? 神崎さんは、不敵の笑みを浮かべていた。
 まるで全てを理解していたように。まさか、篠田が金に困り、もっと薬を欲しがるように仕向けるために店であんな頼み方をしたのか?
 だとしたら、神崎さん……。
俺は、神崎さんの考え方に恐ろしさを覚えた。もちろん赤薔薇会にもだが。

 その後。神崎さんは、瀬戸さんに説明してミキさんを監視させた。すぐに捕まえずに泳がすつもりで。だが、しかし赤薔薇会は甘くはなかった。
 警察の目を掻い潜りミキさんを殺した。
 自宅にある小型のプロジェクターやPCウォッチも証拠を消されていた。
 篠田も捕まる前に殺害されていた。俺の努力も虚しく振り出しに戻されてしまった。

「どうやら殺した犯人は、配達員のふりをして部屋に入り込んだようだな。しかも証拠を消してもPCプロジェクターのデータをいじれないように中にウイルスを仕込んで。まぁ、すぐにこちらとの接続をはずしたから無事だったが、ミキのデータが完全に途絶えた。なかなか頭のキレる奴だな……本当に」

 神崎さんは、そう言いながらお店で呑気にコーヒーを淹れていた。
 いや……呑気にコーヒーを淹れている場合ですか!?