「本当?マヤ嬉し~い」
俺は、それを聞いてピクッと反応した。大口の取り引きだと?
それって近々薬の取り引きでもやるのか? 下手に反応するとバレてしまうので、必死に冷静を装いチーズの入った小皿を置いた。すると神崎さんが俺を呼んできた。
「おーい。そこのボーイ。ちょっといいかな?」
「は、はい。何でしようか?」
「水を持ってきてくれないか? あと俺もチーズ」
「かしこまりました」
まだ話を聞きたかったのに神崎さんったら何でこんな時に注文を……。
しかしボーイをやっている以上は、それに従わないといけない。
俺は、慌てて水とチーズを取りに戻った。トレイに水が入ったコップとチーズが入った小皿を受け取ると神崎さんのもとに。
しかし神崎さんが受け取ろうとした瞬間、何故か神崎さんは、手を離してしまった。ガッシャンとコップは地面で割れ。その勢いで水が飛び散った。えっ? 俺は、驚いてしまった。
「す、すみません。すぐに片付けます」
「すまない。手が滑った」
俺は、慌てて割れたコップを拾うが……あれ?
今のわざとだよな? 持った瞬間に手を離したよな? 手が滑っただけ?
するとミキさんは、慌てたようにハンカチを取り出して神崎さんを拭き始めた。
「まぁ大変。服に水が……これだと足りないわね。すぐにタオルを持って来るわ」
ミキさんは、慌てて厨房の方に引っ込んでしまう。すると篠田がソファーから立ち上がった。
「ちょっと便所に行ってくる」と言いながら。
俺は、それに篠田に気をとられていると神崎さんは、俺にこっそりと話しかけてきた。
「立花、篠田の後を追え。早く」
えっ? 神崎さんの方を見ると顔で合図をされた。意味が分からなかったが言われた通りに慌てて篠田を追いかけた。
するとタオルを持ってきたミキさんと篠田がすれ違う。俺は、隠れて見ていると、すれ違い際にミキさんは、篠田に何かを渡していた。
一瞬だったが何か金属製の物に見えた。あれは……何だ?