えっ……またドンペリ！？　もうすでに数百万にはなっているはずだ。
　それに対してマヤさんも大喜び。篠田はギロッと神崎さんを睨み付けていた。

「は、はい。かしこまりました」

　俺は、慌てて返事する。どうやら対抗意識を持ったようだった。
　その後も神崎さんがおつまみを頼めば、それに対しておつまみを頼む。高いお酒を追加したりして対抗してきた。そのたびに料金は上がる。
　チラッと篠田の伝票を見ると八百万以上に。
　ひぇぇ……恐ろしい。俺がどんなに頑張って働いても稼げない金額だ。
　しばらくして篠田はべろんべろんに酔ったまま席を立つとお会計を済ませた。
　もちろんカードで。俺は、篠田を抱えてタクシーまで連れて行く。

「篠田さん。今日は、ありがとう。またマヤに会いに来てね」

「もちろんさ。アハハッ……」

　篠田は、笑いながらタクシーに乗り込むと、そのまま帰ってしまった。その間に変な接触はなし。ただの金遣いの荒い常連客と言った感じだった。
　金銭や薬のやり取りなし。しかし、このお金の出所は？
　確か情報だと物流会社に勤めているはずだ。だが社長でもないのにあんな風に豪遊出来るはずもない。やっぱり薬の取り引きをしてお金をしているのか？

「随分と金遣いの荒い奴だったな」

　ハッとして後ろを見るといつの間にか神崎さんが居た。マヤさんは、すでに中に入っていたが。

「神崎さん！？……と言うか、それを言うなら神崎さんもじゃないですか？　同じようにドンペリ頼んで……大丈夫なんですか？」

　俺は、心配そうに聞いた。いくら任務のためだとは言えあんな使い方をしたら店が潰れますよ！
　気づいたら閉店になったら俺のバイト代が……。
　すると神崎さんは、ハハッと笑ってきた。何が可笑しいんだよ？
　俺は呆れていると、神崎さんはさらにクスッと笑う。

「心配するな。これは瀬戸の経費で落とさせる。アイツが頼んできたことだからな」

「えっ！？」

　それは、それでいいのだろうか？　絶対に後で上から瀬戸さんが怒られそう。
　ちょっと瀬戸さんが可哀想になってきた。