しかし神崎って人は顔色1つ変えずに、俺に話しかけてきた。

「校門の近くで倒れていたんだぞ? 顔色も真っ青だし、最近寝不足か?お昼近くまで寝ていたぞ。しばらくここで休んで、それでも無理そうなら帰った方がいいぞ」

「だ、大丈夫です。ちょっと頭痛がしただけですので」

 まさかお昼近くまで寝ていたなんて……。
 と、とにかくここから早く出よう。また頭がズキズキと痛みだす。
 何だかこの人に会うと胸がざわざわする。余計に頭痛が酷くなっていく。

「とにかく……失礼します」

「無理するなって、さっきより真っ青だぞ!? そのままベッドで休め」

「離して下さい。大丈夫ですから」

 無理やり腕を掴まれると余計に胸がざわついて、どうしようもなく辛くなってきた。苦しい。
 その辛さを逃れようと拒むのだが、彼はそれを止めようとしてくる。やめろ!
 ポケットからナイフを出そうと偲ばせる……その時だった。

「立花先生~様子見に来たよ……キャアッ!! えっ? ちょっと……二人共デキているの!?」

 えっ…?
 よく見ると神崎という男に押し倒されそうになっていた。いや……違うから!!

「違うよ……これは」

 俺は、慌てて言い訳をしようとすると、隣のカーテンが突然開いた。えっ!?
 まさか隣に人が居たの?
 あの誤解を招くようなやり取りに恥ずかしくなる。中から出てきた女子生徒は、前髪が長めでボブヘアのちょっと暗そうな感じの子だった。
 その子は何も言わずに、保健室から出て行ってしまう。顔色も悪そうだったが。

「岸谷じゃん。何? 今頃まで寝ていたってわけ? アイツ……何しに学校に来てるんだか。何様なわけ?」

「マジうざー」

 一緒に居た女子生徒達からブーイングが飛ぶ。岸谷……?
あ、そういえば出席簿に名前が。確か岸谷ほのかだったはず。
 不登校で、来たとしても保健室登校らしい。
 担任の水口先生もそれについてため息を吐きながら悩んでいたっけ。
チラッと岸谷さんのことを発言した女子生徒達を見る。