『立花君。朝早くからごめんな。実は君の実習する学校で良くない噂が流れているから注意しておこうかと思ってさ』

「注意……ですか?」

『そう。最近若い学生の間に新種の麻薬が流行っているらしい。幻覚などの強い成分らしいけど発作もないし。いい匂いもするからダイエットにも効果があるとか、変な噂のせいで問題になっていてね。その出所が、浅草S女子高等学校の裏の掲示板らしい。もしかしたら学校の中でも、そういうやり取りをする人が居るかもしれないから、くれぐれも気をつけて。何か変な人が居たら俺に相談してくれ』

 と言われた。な、何だって!! 新種の麻薬!?
 そんなモノが、この学校にあるのか?

「間違いないのですか? 裏の掲示板って……」

『間違いないよ。捕まった子達からの話だと、そこの掲示板で知ったと証言が出ている。最近でいい……何か変わったことでもいい。教えてくれたら助かるよ』

 変わったこと? その瞬間、神崎という男の顔が浮かんだ。まさかあの男が関係しているのか?
 すると頭が急にズキズキと痛み出してきた。痛い……頭が割れそうだ!!
 あまりの痛さにしゃがみ込んでしまった。

『立花君。どうした……大丈夫か?』

「大丈夫です……ただの頭痛なので。また何か分かったら連絡します」

 あまりの痛さに会話が出来ず、俺はテレビ電話を切った。
 どうしよう……意識が朦朧とする。何か大切なことを忘れている気がするけど。
 それが何なのか分からない。俺は、そのまま意識をなくしてしまう。
暗闇の中で何処からか声が聞こえてきた。
 聞き慣れた声だ。丁度良い低音ボイスであたたかい。
 ハッと目を覚まして起きあがると……あれ? ここは、保健室?
 意識を取り戻したら、いつの間にか保健室のベッドの上で眠っていた。

「気がついたか?」

 えっ……?
 ベッドの周りに囲ってあるカーテンが開くと神崎って人が入ってきた。
 えぇっ? 何で、この人が!? あ、そうか。保健室だし。
 保健室なら養護教諭のこの人が居ても当然だ。
 俺は、慌ててポケットから、いつでも折りたたみナイフを出せるように警戒する。