俺は一体、何をしていたんだ?
 目を覚ますと病院のベッドの上だった。点滴をされており身体が重い。
ふらつく身体を起こして周りを見渡すが何故病院に居るのか、全く分からなかった。

「……何でここに?」

  バイトをし過ぎて、とうとう疲労で倒れたのだろうか?
 大学の他にバイトばかりしていたから無理のない話だが。
 その後。看護師さんが来て精密検査をすることに。
 その間に警察も来て調査をされたのだが、その事に対して記憶が全くない。
 どうやら俺は、ショックで記憶の一部が消えてしまったらしい。
 一種の記憶喪失だとか……。

 刑事の瀬戸さんの話によると俺は、喫茶店であり探偵事務所にバイトをしており、よく調査を手伝っていたとか。そこで事件に巻き込まれ記憶を失ったらしい。
 薬物も犯人によって摂取されてしまったらしい。
 俺が記憶が無いのと、被害者のため罪にはならなかった。しかし治療のために一年間入院をさせられてしまい、結局1年も留年してしまう。
 やっと復帰して大学生活に戻ることが出来た頃には、松本とは1学年の差が出てしまい残念な気持ちだった。
 ハァッ……記憶も曖昧だしツイてない。まさか知らない間に犯罪に巻き込まれていたなんて……。
 しゅんと落ち込んでいると誰かに肩を叩かれる。驚いて見ると松本だった。

「まぁ落ち込むなよ? 明日から2週間。教育実習があるんだろ? 憧れの先生まであと一歩じゃん」

「……うん。そうなんだけどさ。やっぱり1年間の差って大きく出そうじゃん。しかも記憶がないとはいえ……あれだし」

「気にするなって。お前は、被害者じゃないか。刑事の人もそう言っていたしさ。その事件に関しては、伊波も捜査すると言ってくれているし」

「うん……そうだよね」

 松本のことは高校の頃からだから覚えていた。伊波君は大学の途中からだから覚えてなくて、あれからまた会い仲良くなった。
 伊波君の話だとバイト先の神崎というオーナーは、かなり酷い男だったらしい。
 俺を利用して事件に巻き込み、そのせいで記憶が無くなったとか。
 伊波君のお兄さんも彼のせいで亡くなっており、彼を許せないらしい……。
 だが、その事件のせいで姿を消してしまったらしく、もしかしたら事件の黒幕ではないかと推測して警察もその捜査で進んでいるとか。
 本当にそうなら何で、俺はそんなところでバイトなんかしていたのだろうか?
 それに……何故だろうか? 

 このモヤモヤした気持ちは。まるで絡まった糸みたいにスッキリしない。
 心に闇を思ったかのように記憶に霧がかかっている。何か違和感がある。
だが、その事件の真相を知るのが怖くて自分で調べることが出来なかった。
 それにお店も閉まっているから確認も出来ないし、あの辺を通るにも勇気がいる。
 とりあえず今は、教育実習を上手くやらないと……。
 頭で何度も言い聞かしながら俺は新たな気持ちで、教育実習に望むことにした。
 俺が担当する学校は、浅草S女子高等学校。
そこで国語を教えることになった。クラスは、2年1組。