「ニャー、なんかカッコいいのニャッ!」

「うむうむ、悪くないですにゃ~。詳細不明の外国語が由来というのは、なかなか民の心をくすぐる情報ですのにゃ」

 リィトのネーミングセンスを心配していたナビも、悪くない反応をしてくれた。

 リィトは、何度か「トーゲン村」と呟いてみる。

 口馴染みもいい。それに、なんだかワクワクする。

「よし、今日からここはトーゲン村だ」

 リィトの言葉に、周囲で様子をうかがっていた花人族たちが飛び跳ねた。

「「「「アリガトーッ!!!」」」」

 完全にパリピモードである。

 ナビとフラウが、花人族たちに「トーゲン村」という言葉を教えてからは鳴り止まないトーゲン村コールが響き渡ったのであった。

「うーん、また宴モードになってしまった」

「提案。マスター、例のアレを召し上がるのもよいのでは」

「あ。たしかに」

 例のアレ、というのは今回の取引で手に入れた現金でミーアから購入したものだ。

 高級バーベキューセット。

 植物ではどうにもならないモノのうちのひとつが肉である。

 大豆ミートを将来的に作りたいという気持ちはあるけれど、今はまだ夢のまた夢だ。とりあえず、美味い料理が食べたい段階。

「新鮮なお肉なら、焼けばとりあえず旨いもんな」

「同意いたします、マスター。流通している肉類は保存のための塩漬けにより、過度な塩分量となっている傾向にあります」

「うん、どこ言っても塩っ辛いもんなぁ……」

 だが、今回は違う。

 ミーアが肉屋から直接買い付け、運送ギルド〈ねずみの隊列〉の口利きで、氷魔法で保冷してもらった新鮮な肉の塊を手に入れたのだ。

 日持ちするものではないし、美味しいうちに食べてしまいたい。

「よし、昼はバーベキューにするか!」

「むー、いいニャ!」

「ふにゃあ……あの甘露なるマタタビ酒が忘れられないですにゃ……」

「時間が許すなら、よかったら二人も一緒にどうぞ」

「「ニャッフーッ!!」」

 飛び跳ねる猫人族。

 やっぱり猫もお肉は好きだ。

 本当はお魚でも咥えさせてあげられればいいのだが、残念ながらトーゲン村には目立った水辺はなし。

 農業用水の確保もについても、頭の痛い問題だ。

 まぁ、今はとにかくバーベキューだ。