2.ホヅミの話
「私イケカテ推してたじゃん。」
私はポテトの山から他のより少し茶色めのしなっとしたやつを選んで口に入れた。
なんかこっちのほうが塩とかが染み込んでる感じがして好きだ。
「フウマくんだっけ?」
「そうそう。」
「結構あんた熱狂的だったよねー。配信中投げ銭しすぎて『今月もお茶投げすぎて金欠オワタ』とか呟いてたじゃん。」
サイトウはポテトにケチャップをつけながら言う。彼女は「ポテトには絶対ケチャップ!党」だ。
「んー、まぁそうなんだけどさぁ」
ホヅミこと、私、穗積 晶はイケカテであるフウマくんを推していた。
イケカテとは、某有名配信アプリで「イケメンボイス」をカテゴリーにして配信している人のこと。略してイケカテ。
去年の9月ごろになんの気なしに適当にいろんな枠(放送の意)を出たり入ったりしていたとき、私はフウマくんに出会った。
そこからはもう怒涛の毎日。毎日夜8時から配信をしている彼の声を聞くために必ず8時から枠に入るようにしたし、
名前も覚えてもらいやすいように「毎週月曜日に足の小指をぶつける女」にした。
もちろんこの名前はすぐに覚えてもらったし、なんなら初めてお茶を投げたとき、笑いのツボが浅い我が推しは盛大に笑ってくれた。
時が経つにつれ、推しは私のことを認知してくれたし、私も最初の方は緊張のあまり手が震えてなかなか送れなかったDMもぽこぽこ遅れるようになっていた。
全てが順調で満ち足りていた。ずっとこの毎日が続くと思っていた。
しかし事件は起こった。
忘れもしない一ヶ月前のこと。
推しがファンの子と繋がりを持っていることが発覚したのだ。
しかも一人ではなく数人と。
そしてその中の一人がある掲示板で暴露をし、ファンの間で広まりそれは私の元にも届いた。
そこからはあっという間だった。
気がついたら夜の8時になってて推しは謝罪の配信を始め、そして最後の方には秘密が公になってすっきりしたのか、とても清々しく開き直っていたように思えた。
__あ、なんか違うな。
そう感じた。
次の日、私はその配信アプリとアルバムやバックアップにあった動画や写真を全て消した。
正直ためらいが全くなかったといえば嘘になる。今消してしまったら、あのとき自分が必死になってストレージと格闘しながら撮った動画はもう二度と見れなくなる。
それでも、あのとき、あの瞬間、私ははっきりと推しに対して「なにか違う」と思った。
それならばそれが答えなんだろう。
アルバムにはこの前サイトウとミシマと遊びに行ったときの写真三枚と動画一本しか残らなかった。
「うわー、マジか。あんたの推しやってんねー」
ミシマが店員さんから別にもらった追加の塩を自分のポテトにふりかけながら、うぇーっと顔をしかめる。
「あ、やべっ、塩入れすぎた。」
そう言いつつもそこから三本まとめてとり更にマスタードをつけて一気に頬張るミシマに「あー、もう、またそんな食べ方して!体に悪いんだからねー」と口を尖らせるサイトウ。
「でもほんと一回冷めるとそっからはすぐだよねー」
口に入れたポテトを流し込むようにシェイクを飲みながらミシマが言う。
ミシマの前の推しもグラビアアイドルとの熱愛が出ていた。
「なんで推しが選ぶ女って匂わせしたり暴露したりするような人ばっかなんだろ。」
「推しと付き合うから匂わせするような人になるんでしょ。」
「あー、なるほどね。それは新説だわ。」
「私イケカテ推してたじゃん。」
私はポテトの山から他のより少し茶色めのしなっとしたやつを選んで口に入れた。
なんかこっちのほうが塩とかが染み込んでる感じがして好きだ。
「フウマくんだっけ?」
「そうそう。」
「結構あんた熱狂的だったよねー。配信中投げ銭しすぎて『今月もお茶投げすぎて金欠オワタ』とか呟いてたじゃん。」
サイトウはポテトにケチャップをつけながら言う。彼女は「ポテトには絶対ケチャップ!党」だ。
「んー、まぁそうなんだけどさぁ」
ホヅミこと、私、穗積 晶はイケカテであるフウマくんを推していた。
イケカテとは、某有名配信アプリで「イケメンボイス」をカテゴリーにして配信している人のこと。略してイケカテ。
去年の9月ごろになんの気なしに適当にいろんな枠(放送の意)を出たり入ったりしていたとき、私はフウマくんに出会った。
そこからはもう怒涛の毎日。毎日夜8時から配信をしている彼の声を聞くために必ず8時から枠に入るようにしたし、
名前も覚えてもらいやすいように「毎週月曜日に足の小指をぶつける女」にした。
もちろんこの名前はすぐに覚えてもらったし、なんなら初めてお茶を投げたとき、笑いのツボが浅い我が推しは盛大に笑ってくれた。
時が経つにつれ、推しは私のことを認知してくれたし、私も最初の方は緊張のあまり手が震えてなかなか送れなかったDMもぽこぽこ遅れるようになっていた。
全てが順調で満ち足りていた。ずっとこの毎日が続くと思っていた。
しかし事件は起こった。
忘れもしない一ヶ月前のこと。
推しがファンの子と繋がりを持っていることが発覚したのだ。
しかも一人ではなく数人と。
そしてその中の一人がある掲示板で暴露をし、ファンの間で広まりそれは私の元にも届いた。
そこからはあっという間だった。
気がついたら夜の8時になってて推しは謝罪の配信を始め、そして最後の方には秘密が公になってすっきりしたのか、とても清々しく開き直っていたように思えた。
__あ、なんか違うな。
そう感じた。
次の日、私はその配信アプリとアルバムやバックアップにあった動画や写真を全て消した。
正直ためらいが全くなかったといえば嘘になる。今消してしまったら、あのとき自分が必死になってストレージと格闘しながら撮った動画はもう二度と見れなくなる。
それでも、あのとき、あの瞬間、私ははっきりと推しに対して「なにか違う」と思った。
それならばそれが答えなんだろう。
アルバムにはこの前サイトウとミシマと遊びに行ったときの写真三枚と動画一本しか残らなかった。
「うわー、マジか。あんたの推しやってんねー」
ミシマが店員さんから別にもらった追加の塩を自分のポテトにふりかけながら、うぇーっと顔をしかめる。
「あ、やべっ、塩入れすぎた。」
そう言いつつもそこから三本まとめてとり更にマスタードをつけて一気に頬張るミシマに「あー、もう、またそんな食べ方して!体に悪いんだからねー」と口を尖らせるサイトウ。
「でもほんと一回冷めるとそっからはすぐだよねー」
口に入れたポテトを流し込むようにシェイクを飲みながらミシマが言う。
ミシマの前の推しもグラビアアイドルとの熱愛が出ていた。
「なんで推しが選ぶ女って匂わせしたり暴露したりするような人ばっかなんだろ。」
「推しと付き合うから匂わせするような人になるんでしょ。」
「あー、なるほどね。それは新説だわ。」