そんな俺の表情をのぞきこむようにしながら彼女は背中に手を回して首をかしげた。
「スーパームーンって知ってる?」
「なんだそれ」
「いつもより満月が大きいんだって」
「月の大きさが違う? なんで? 風船みたいにふくらむのか?」
「月と地球の距離ってだいたい三十八万キロメートルなんだけどね」
「そんなのよく覚えてるな」
「日本の面積も約三十八万平方キロだから、数字が同じで覚えやすいでしょ」
「月とニッポンじゃ、全然関係ねえし、面積と距離じゃ単位が違うじゃんよ」
「キミさ、意外と細かいね。ていうかさ、今のも『月とスッポン』にかけてるの?」
「かけてねえし」
「ほんとかなあ。ダジャレ好きなの?」
「いや、そっちだろ。なんでもからめてるのは」
少し苛立ってしまったせいで口調がきつくなっていたことに気づいて、俺は強引に話を元に戻していったん心を落ち着かせようとした。
「で、それで? 距離が何だって?」
「月が地球の周りを回るときの軌道って完全な円じゃなくて、微妙に変化してるんだって」
「へえ、そうなのか」
「けっこうグニャグニャと波打った円みたいよ」
「ちゃんときれいに回ればいいのにな。その方がめんどくさくないだろうに」
「月と地球と太陽の引力がお互いに影響しちゃって、逆にその方がバランスが取れてるんだって」
「三角関係ってのは星でも微妙なもんなんだな」
「キミだって関係ないものをつなげちゃってるじゃん。恋と天体はなんの関係もないでしょ。それとも何よ、星も恋もどっちも男のロマンとか言うわけ?」
「そんなこと言ってないだろ」
「赤くなっちゃって」
マジかと少しあわてたけど、照明を背にした俺の顔色の変化が分かるわけがないことに気づいた。
「暗くて見えないだろ」
「耳、赤いよ」
「寒いからだよ」と、俺はわざとらしく白いため息を吐き出した。「そんで、さっきの話は?」
脱線ばかりで話が進まない。
ただ、俺の方もその会話のリズムになじんできたような気はしていた。
「スーパームーンって知ってる?」
「なんだそれ」
「いつもより満月が大きいんだって」
「月の大きさが違う? なんで? 風船みたいにふくらむのか?」
「月と地球の距離ってだいたい三十八万キロメートルなんだけどね」
「そんなのよく覚えてるな」
「日本の面積も約三十八万平方キロだから、数字が同じで覚えやすいでしょ」
「月とニッポンじゃ、全然関係ねえし、面積と距離じゃ単位が違うじゃんよ」
「キミさ、意外と細かいね。ていうかさ、今のも『月とスッポン』にかけてるの?」
「かけてねえし」
「ほんとかなあ。ダジャレ好きなの?」
「いや、そっちだろ。なんでもからめてるのは」
少し苛立ってしまったせいで口調がきつくなっていたことに気づいて、俺は強引に話を元に戻していったん心を落ち着かせようとした。
「で、それで? 距離が何だって?」
「月が地球の周りを回るときの軌道って完全な円じゃなくて、微妙に変化してるんだって」
「へえ、そうなのか」
「けっこうグニャグニャと波打った円みたいよ」
「ちゃんときれいに回ればいいのにな。その方がめんどくさくないだろうに」
「月と地球と太陽の引力がお互いに影響しちゃって、逆にその方がバランスが取れてるんだって」
「三角関係ってのは星でも微妙なもんなんだな」
「キミだって関係ないものをつなげちゃってるじゃん。恋と天体はなんの関係もないでしょ。それとも何よ、星も恋もどっちも男のロマンとか言うわけ?」
「そんなこと言ってないだろ」
「赤くなっちゃって」
マジかと少しあわてたけど、照明を背にした俺の顔色の変化が分かるわけがないことに気づいた。
「暗くて見えないだろ」
「耳、赤いよ」
「寒いからだよ」と、俺はわざとらしく白いため息を吐き出した。「そんで、さっきの話は?」
脱線ばかりで話が進まない。
ただ、俺の方もその会話のリズムになじんできたような気はしていた。