二十五歳になって、同じソファーでテレビを見ていた時のこと。今までなら、流れる水のようにスルーしていたCMをぼんやり見ながら。

「……キレイだなぁ、ドレス」

 彼女が、ぽつりとつぶやいた。
 結婚式場で笑い合う二人が、幸せそうに頬を寄せ合っている。それを眺める彼女の横顔から、そっと視線を逸らした。

「そういえば、中学のときの友達が結婚するんだって」
「へぇ、そう」
「急に連絡来るから、何事かと思った。千秋は、結婚式って出たことある?」
「……ない。友達少ないし」

 視線を他へ向けたまま、そっけなく返し過ぎたかもしれない。

「うちらも、もうそうゆう歳かぁ」

 無理して笑ってみたけど、彼女はふいっとスマホを取り出して、話題を変えた。
 少し、わざとらしかったかな。これでも、ポーカーフェイスを保とうとしたつもりだった。憧れの眼差しを向ける横顔に、胸が押し潰されかけながら。

 ずっと曖昧にしてきた関係を、見つめ直す時が来たのだと、警告された気がした。