二人は手を取りあってゆっくり、ゆっくりと石段を下りていく。

 眼下の港には赤と白、二つの灯台がたたずんでいる。

 お互いの距離をはかるように、明かりが灯る。

 ――美緒。

 彼女が振り向く。

「ん、どうした?」と、先輩も振り返る。

「ううん、なんでもない」

 ――さよなら、美緒。

 もう僕の声は届かない。

 彼女の笑顔が涙に溶けていく。

 虹色のシャボン玉となって空へ舞い上がっていく。

 半分だけの夕暮れ空の天上はすでに暗く、ひとすじの風が吹き抜けていった。