「……もし、私がそうだとすれば――星夜を、助けられるんですか?」
「おっしゃる通りです。なにしろ歌子様、貴女様もまたあやかし。鬼神や天狗と同じように、力があるはずなのですよ」
「教えてください。私には、何の力があるんですか?」
「ひとつはもう、ご存じのはずですよ。歌子様、貴女様は、他のあやかしの力を高めることが御出来になります。他の神々とともに征き、他の神々を助ける……それこそが、畜生道の呪いを受けられた神々の固有の力です。そして、もうひとつは――貴女様が見つけるしかないものです」

 私が、見つける……?

「いまの歌子様は、失礼ながら、大変弱くていらっしゃいますね。いくら星夜様のお力を高めるとしても、とても戦場に連れ出せる能力ではございません。しかし、あやかしは本来、超越的な身体能力を持ちます。修行次第では、そのお力を見出せるやもしれません。……それこそが活路になり得ます」
「私が、強くなったら――戦場で、星夜を助けることができるかもしれないってことですか?」
「その通りです。星夜様はもともとかなりのお力をお持ちですが、天下を取るまでには至っておりません。そこで歌子様のお力添えがあれば、天狗たちも含め、勢力図をひっくり返せると思われておりました――であるからこそ、鉄の掟を破ってまで、あたくしどもは歌子様を夜澄島に迎え入れようと思ったのです。……いまでも。その目的が果たされるならば、貴女様を歓迎したいと思っております。ですが貴女様がやはり夜澄島の、鬼神族の弱みで居続けるようでしたら、実家にお帰りいただきたいという、至極単純なお話なのです」

 私が強くて役に立てるなら、夜澄島にいられる。
 弱くて役立たずなら、追い出される。
 ……確かに、シンプルな話なのかもしれない。

 自分が、呪いを受けた神様の生まれ変わりとか。
 実はあやかしだったとか。
 そういうのは、まだ全然……ピンとこないけど……。

 わかっているのは、……星夜のそばに居続けたい、ということ。

 私は背筋をまっすぐに伸ばして、真正面から、言った。

「――私。強く、なります」

 お荷物の、私じゃなくて。
 願わくは……星夜の重荷さえ、一緒に背負えるほどの。

 星夜のとなりにいて、相応しい私に、なりたい。
 そうすれば……きっと。

 彼を守ることができる。
 これからも、ずっと一緒に……いることができる。