私は正座して、黄見さんも正座して、話した。

 私が弱いせいで、星夜の弱みとなり、さらわれてしまって。
 星夜は……天狗族と、全面的に決着をつけるため、いよいよ戦争となってしまって……。

 そのことをとても申し訳なく思っていること。
 悔しく思っていること……。
 私がもっと、強ければ――こうはならなかったのに、と。

 ……私はもう、夜澄島にはいられないだろうけれど。
 でも、強くなりたい。

「本当は……私が、星夜を守れるくらいにっ……」

 絞り出すように、言った言葉は。
 ……自分でもいままで知らなかった、自分自身の、本音だった。

「……そうですか。歌子様、あたくしはいままで少々、貴女様のことを誤解していたやもしれません。可愛らしい見かけに反して……意志はしっかりしているようです」

 黄見さんは、微笑む――見た目には普段と変わらない微笑みだったけれど、普段よりもあまり怖くないと感じた。
 圧が……減っているのだ。

「歌子様。あたくしは貴女様を、強くできるかもしれません。……星夜様を御守りできるほどに」

 黄見さんは視線を落として、歌うように言う。

「星夜様は、素晴らしきお力を持った御方。ですが、なにせお気持ちに波があられます。あのままでは天下を取れないでしょう。鬼神族の悲願も果たせないでしょう。しかし歌子様。貴女様が本気であるならば。ひとつだけ、活路が御座います。貴女様と星夜様が互いになくてはならない、けっして離れがたい、そのような宿命を歩める道です」
「――教えてください」

 私でも……星夜の力に、なれるの?
 なりたい。

 守ってもらうだけじゃなくて。
 もっと強い、私になりたい。

 そして……気がついてしまった。
 ああ、私は本当は、――星夜と離れることを、微塵も納得していないんだ、って。

 一緒に……いたいんだって……!

「しかし……承諾した後、後には戻らないでいただきたいのです。あたくしどもは、修羅の一族。けっして生易しいことは申し上げませんよ。……永久花に受けた仕打ちよりもつらい修行となるやもしれません。御覚悟をなさっていただきたいのです」
「……大丈夫です。黄見さん、お願いします、教えてください」

 私はコンクリートの床に両手をついて――頭を下げた。
 星夜の力になれるなら。
 これからずっと、星夜と一緒にいられる道があるのなら。

 怖くないわけではない――だけど、私のできることは、なんだってやりたい!

「……承知しました。歌子様。これからあたくしが話すことは、鬼神族のもっとも深い秘密です。けっして他言しないとお約束くださいまし。鬼神の者たちの多くは、先祖たちから色々と聞いて何となくは知っているやもしれませんが、すべては知りません。あたくしのような旧い者たちが、秘密を守り続けております。他のあやかしたちは、知らない者がほとんどでしょう。ましてや人間たちに知られてよいことではないのです」

 もちろんです、と私はうなずき――。
 黄見さんは、語り出した。

 鬼神族と天狗族の宿命。
 そして、呪い持ちという私の存在について――。