爆風が全身を煽るけれど――。
 私にはぶつからないようにしてくれたのだろう。
 こちらへの被害は、まったくなかった。

 私と星夜以外にはだれもいなくなった、壊滅状態の倉庫。
 星夜はこちらに駆け寄って、私の首輪の鎖を外し、ぎゅっと抱きしめた。

「歌子。すまない。本当にすまない。俺は……おまえを、守れなかった……」

 いいんだよ。
 星夜のせいじゃないもの……。

 そう言いたい――せめて気持ちだけは込めて、くーんと、私は鳴いた。
 慰めるかのように。

 星夜は、私をぎゅっと抱いたまま、私の頭を撫でる。
 普段よりも、強く……。

「おまえが危険な目に遭って、やっとわかった……俺にとって歌子が、本当に大事な存在になっていたこと。歌子が笑っていれば嬉しくなる。歌子が落ち込んでいれば励ましたくなる。そしてそんな歌子がひどい目に遭い……失うかもしれないと考えたとき……俺は、これまでに感じたことのない絶望を感じた。……奈落の底へ落ちていくような気持ちだった」

 いまにも泣き出しそうな声で、星夜は語った。

「気がついたんだ」

 すこしだけ――微笑のような響きを、泣き出しそうな声のなかに滲ませて。

「最初は、犬だから可愛いと思って手元に置いていた。だがいまでは、おまえをすべて――愛している」

 それはそれは、愛おしそうに。
 雨宮星夜は――私を、愛していると言った。

「おまえを苦しめた天狗どもは……全員、懲らしめる。今度こそ逃がさない。全力をもって――殲滅する」

 こんなに、こんなに伝えたいことがあるのに。
 なにも言えないこの身体が、もどかしい。

「だから……いまだけは、歌子……」

 私は、せめて前足に力を込める。
 星夜と私は……静かに抱きしめあった。