幽玄学院での日々が過ぎていく。

 私は、夕樹のほかにも友達をつくれるように努力した。
 クラスメイトたちが何のあやかしなのか覚えて、名前も覚えて、話しかけて。

 更なる距離をクラスメイトたちに取られてしまわないよう、星夜にはもう絶対に教室に来ないでと強く言っておいた。
 星夜は最初は納得していなかったけれど、もう一度来たら実家に帰らせていただきます、とまで言ったら、しぶしぶ了承してくれた。

 だけどみんな、私と親しく話そうとはしなかった。
 良くて、事務連絡だけ。
 相変わらず山華さんは敵意を剥き出しにしていたし……氷子さんもそうだった。

 夕樹も頑張ってくれたのだけれど、やっぱり、駄目だった。
 でももちろん……夕樹のせいではない。
 認めてもらえない私がいけないんだ……。

 確かに……学校には、行きたかった……。
 でも、これは。
 私の思い描いていた学校生活ではない……。

 朝と夕方の送迎の船でも、私は言葉数が減っていった。
 初日は気持ちよく感じた風も……なんだか、いまはうっとうしく感じる。

 二週間ほど経っても……私は、学校で避けられたままだった。

 星夜は、私の学校生活についても気にしてくれる。

「歌子。学校生活はどうだ」

 そう問われるたびに……。

「大丈夫! 夕樹もいてくれるし、みんな優しいし、本当に楽しい」

 笑顔で、そう返していた。

 ……これは、私の問題だ。
 学校に行ける環境を作っておいてもらいながら、うまくやれていないなんて。
 恥ずかしくて……申し訳なくて、星夜には言えなかった。

「そうか。おまえがそう言うなら信じるが……何かあったら俺を頼れよ」
「それでまた、いつもいつも教室に様子を見に来るとかだと困るんですよ?」

 大丈夫。大丈夫だ。
 だって……まだ、軽口を叩く余裕もあるのだから。