そして鬼神族の会議を経て――。
「叶屋歌子は鬼神族以外で唯一、夜澄島に正式に所属する者になった」
星夜は相変わらずの無表情だったけど、ほっとしていると私にはわかった。
一緒に来た暮葉さんはぐったりしていて、結構、波乱だったのかな……と察した。
ちなみに、小耳に挟んだ話によると。
どうも、私は人間のすがたのときより、犬のすがたのときのほうが霊力を高められるようだったけれど……。
人間のすがたのときにも霊力を高められるのは事実だし、月に一度犬にもなるのだから、いいだろう、という判断らしかった。
星夜は、夜澄島全体に、私を「恵みの白犬」として丁重に扱うように、との指示を出したようだった。
入学は、一週間後。
私はそれまで、高校の勉強の予習をしながらも、のんびりと過ごした。
娯楽には全然困らなかった。
……水色の首輪はつけっぱなしにしている。
星夜が……夜澄島にいるなら、そうしろって……。
まあ、この首輪。大きめだし、チョーカーのように見えなくもなくて、人間のときにつけられないものでもない。
学校に行かせてもらって、こんなにいい待遇も受けているんだ。それくらいはまあ、いいかなと思うことにした。
お姉ちゃんと寿太郎とも連絡を取り合って、お父さんとお母さんにも改めて話をして。
あの後、お姉ちゃんがすごく丁寧に説明してくれたのだろう、寿太郎もお父さんもお母さんも、私の新生活に理解を示してくれた。ちょっと寂しいけれど、嬉しかった。
日常のことは、鬼神族の女性のみなさんがお世話をしてくれる。
こちらが申し訳なくなるほど、かいがいしく……。
お世話の責任者は、なんと神社の前で会った黄見さんだった。
「歌子様。貴女様は星夜様の大切な御方。なんでも言いつけてくださいまし」
完璧な笑顔と所作でいつも接してくれるのだけど、どことなく怖くて、あまり気軽には頼めなかった……むしろちょくちょく顔を出してくれる夕樹のほうが、いろいろ頼みやすかった。
夕樹は犬だと思っていた私が人間だったことに驚いていたけれど、いい意味でざっくりとした性格のおかげか、すぐに馴染んでくれた。
最初は夕樹さんと呼んでいたのだけど。
「なんでさん付けなの! 同じ高校生になるんでしょ? 呼び捨てでいいよ。僕も歌子って呼んでいい?」
もちろん、と答えて、私たちはよく話す仲になった。
最近は天狗族との情勢も悪くて、学校がちょくちょく休みになる。夕樹はよく私の部屋に遊びに来てくれて、一緒に動画を見たり、おしゃべりしたり、楽しく過ごした。
一度、呼び捨てにし合っている私たちを見た暮葉さんは、仏頂面で「歌子様と呼びなさい」と言っていたけど、私は慌てて止めた。
「っていうか……暮葉さんたちも、様付けなんてしなくていいですよ」
私はそう言ったのだけれど、暮葉さんはむっとしたように言った。
「そんなわけにはいきません。貴女様は星夜様の大事な御方ですから」
……すごい、棒読みだった。
鬼神族のみなさんの反応は、ふたつに分かれていた。
夕樹をはじめ好意的に接してくれる人と、どことなく距離を感じる人と。
星夜が本当に頻繁に来てくれて、一緒にたくさん時間を過ごしてくれたから、あまり深く悩まずには済んだけれど――鬼神族のみなさんとの距離感が気になるのも、本当だった。
「叶屋歌子は鬼神族以外で唯一、夜澄島に正式に所属する者になった」
星夜は相変わらずの無表情だったけど、ほっとしていると私にはわかった。
一緒に来た暮葉さんはぐったりしていて、結構、波乱だったのかな……と察した。
ちなみに、小耳に挟んだ話によると。
どうも、私は人間のすがたのときより、犬のすがたのときのほうが霊力を高められるようだったけれど……。
人間のすがたのときにも霊力を高められるのは事実だし、月に一度犬にもなるのだから、いいだろう、という判断らしかった。
星夜は、夜澄島全体に、私を「恵みの白犬」として丁重に扱うように、との指示を出したようだった。
入学は、一週間後。
私はそれまで、高校の勉強の予習をしながらも、のんびりと過ごした。
娯楽には全然困らなかった。
……水色の首輪はつけっぱなしにしている。
星夜が……夜澄島にいるなら、そうしろって……。
まあ、この首輪。大きめだし、チョーカーのように見えなくもなくて、人間のときにつけられないものでもない。
学校に行かせてもらって、こんなにいい待遇も受けているんだ。それくらいはまあ、いいかなと思うことにした。
お姉ちゃんと寿太郎とも連絡を取り合って、お父さんとお母さんにも改めて話をして。
あの後、お姉ちゃんがすごく丁寧に説明してくれたのだろう、寿太郎もお父さんもお母さんも、私の新生活に理解を示してくれた。ちょっと寂しいけれど、嬉しかった。
日常のことは、鬼神族の女性のみなさんがお世話をしてくれる。
こちらが申し訳なくなるほど、かいがいしく……。
お世話の責任者は、なんと神社の前で会った黄見さんだった。
「歌子様。貴女様は星夜様の大切な御方。なんでも言いつけてくださいまし」
完璧な笑顔と所作でいつも接してくれるのだけど、どことなく怖くて、あまり気軽には頼めなかった……むしろちょくちょく顔を出してくれる夕樹のほうが、いろいろ頼みやすかった。
夕樹は犬だと思っていた私が人間だったことに驚いていたけれど、いい意味でざっくりとした性格のおかげか、すぐに馴染んでくれた。
最初は夕樹さんと呼んでいたのだけど。
「なんでさん付けなの! 同じ高校生になるんでしょ? 呼び捨てでいいよ。僕も歌子って呼んでいい?」
もちろん、と答えて、私たちはよく話す仲になった。
最近は天狗族との情勢も悪くて、学校がちょくちょく休みになる。夕樹はよく私の部屋に遊びに来てくれて、一緒に動画を見たり、おしゃべりしたり、楽しく過ごした。
一度、呼び捨てにし合っている私たちを見た暮葉さんは、仏頂面で「歌子様と呼びなさい」と言っていたけど、私は慌てて止めた。
「っていうか……暮葉さんたちも、様付けなんてしなくていいですよ」
私はそう言ったのだけれど、暮葉さんはむっとしたように言った。
「そんなわけにはいきません。貴女様は星夜様の大事な御方ですから」
……すごい、棒読みだった。
鬼神族のみなさんの反応は、ふたつに分かれていた。
夕樹をはじめ好意的に接してくれる人と、どことなく距離を感じる人と。
星夜が本当に頻繁に来てくれて、一緒にたくさん時間を過ごしてくれたから、あまり深く悩まずには済んだけれど――鬼神族のみなさんとの距離感が気になるのも、本当だった。