「私は呪い持ちなだけで、あやかしですらありません。それにうちは、両親の職業がちょっと特殊ですが、お金持ちってわけでもない普通の家です。一般庶民です。私なんか、幽玄学院には、相応しくないんじゃないかな、って思うんですけど……」
呪い持ちであること以外はごくごく平凡な私が、そんな特別なあやかしばかりが集まる学校に通ってしまったら。
浮くんじゃないかな。
それどころか、いじめられたりして……。
特殊な力を持つあやかしたちに目をつけられたりでもしたら、危ないんじゃないのかな……?
「歌子は入学資格を満たしている。幽玄学院は、あやかし、またはそれに準ずる生徒のための学校だ。呪い持ちは後者の条件を満たす。それに、高校に毎日通いたいという貴様の願いを叶えるには、幽玄学院が良い」
星夜は、またまたきっぱりと言い切った。
「もし貴様がどこか別の高校が良いというのであれば、その高校に入学し通えるよう手配しよう。だが、特定の高校に入りたいというわけではなく、毎日高校に行きたいという願いなのであれば、幽玄学院がベストだ」
「どうしてですか?」
星夜の話によれば。
幽玄学院ならば、他の学校と違って私は毎日学校に通える。
なぜなら――犬に変身する期間でも、受け入れてくれるから。
「……犬になったまま学校に通うんですか? 難しいんじゃないですか?」
「あやかしは、呪い持ちという存在をある程度はみな知っている。幽玄学院に通う若いあやかしたちもだ。呪い持ちについては不明な点も多いが……すくなくとも人間どもよりは、広くみな知っている。呪い持ちとは根本的に異なる事情だが、妖狐や狸など姿かたちを変えるあやかしも多く通っている。貴様が犬に変身することも、すんなり受け入れられるはずだ。姿かたちが変わることなど、あやかしにとっては日常茶飯事でだれもそこまで気にしないであろう」
「そういうもの、ですか……」
つまり、犬に変身する期間は学校に通えないという制約は――なくなるのか。
「……うーん、でも。犬のすがたのまま学校に通うって……やっぱり、難しくないですか? そもそも通学できる自信がありません」
バイト帰りに変身しただけで事故に遭って、行方不明になる有様だ。
お姉ちゃんも、うんうんと私の言葉にうなずいている。
「まず、毎日の学校への送迎は俺が行おう」
「星夜様! お仕事がどっさりと溜まっていらっしゃるこの時に、そのようなことをされてはお時間が……」
星夜は鋭い目で暮葉さんを睨んだ。
「俺に意見をするな、暮葉」
「……申し訳ありません」
「また、歌子のそばで仕事ができるよう、幽玄学院の敷地に俺の事務所を新しく作らせる」
事務所を、新しく作る……。
あっさり言ったけれど、それって、すごいことだよね。
「さらに念には念を入れ、護衛兼、身の回りの世話をさせる者をつける。夕樹が適任だろう。通学時にはもちろん、クラスやあらゆる授業をともにさせ、不便のないように計らわせる」
「夕樹さん……」
星夜のいない昼間に私を可愛がってくれて、ボールで遊んでくれたり、とてもよくしてくれた同年代のあの女の子。
夕樹さんなら信用できる……。
でも。
「それで、通学ができたとしても。私、呪い持ちなのに。あやかしの学校なんかに行ったら――狙われまくっちゃうんじゃないですか?」
「そのような心配はない」
星夜は、不敵に笑った。
「俺は貴様のもとにいつでも駆けつけられる場所にいる。昼間は幽玄学院で、夜間は夜澄島でいつでも貴様を守る」
「星夜様! 毎日、幽玄学院に通われるのですか? このお忙しいときに?」
「そんなに遠い距離でもないだろう。夜澄島から船を出すようにしろ」
「はあ……そうですか……承知しました……」
暮葉さんはもう、何かを諦めつつあるようだった。
「夕樹の賞賛に値する点は、犬を可愛いと思えるところと、鬼神族のだれよりも力持ちであるところだ。あいつがついているならば、そのへんのあやかしには簡単に負けない」
ぞくっとした。
鬼神族のだれよりも、力持ち……?
あの、線の細い少年のような夕樹さんが?
あやかしという存在は、やはり――人間の理解を、超えている。
だけど、たしかに。
そうやって守ってくれるのであれば……大丈夫、なのかな。
呪い持ちであること以外はごくごく平凡な私が、そんな特別なあやかしばかりが集まる学校に通ってしまったら。
浮くんじゃないかな。
それどころか、いじめられたりして……。
特殊な力を持つあやかしたちに目をつけられたりでもしたら、危ないんじゃないのかな……?
「歌子は入学資格を満たしている。幽玄学院は、あやかし、またはそれに準ずる生徒のための学校だ。呪い持ちは後者の条件を満たす。それに、高校に毎日通いたいという貴様の願いを叶えるには、幽玄学院が良い」
星夜は、またまたきっぱりと言い切った。
「もし貴様がどこか別の高校が良いというのであれば、その高校に入学し通えるよう手配しよう。だが、特定の高校に入りたいというわけではなく、毎日高校に行きたいという願いなのであれば、幽玄学院がベストだ」
「どうしてですか?」
星夜の話によれば。
幽玄学院ならば、他の学校と違って私は毎日学校に通える。
なぜなら――犬に変身する期間でも、受け入れてくれるから。
「……犬になったまま学校に通うんですか? 難しいんじゃないですか?」
「あやかしは、呪い持ちという存在をある程度はみな知っている。幽玄学院に通う若いあやかしたちもだ。呪い持ちについては不明な点も多いが……すくなくとも人間どもよりは、広くみな知っている。呪い持ちとは根本的に異なる事情だが、妖狐や狸など姿かたちを変えるあやかしも多く通っている。貴様が犬に変身することも、すんなり受け入れられるはずだ。姿かたちが変わることなど、あやかしにとっては日常茶飯事でだれもそこまで気にしないであろう」
「そういうもの、ですか……」
つまり、犬に変身する期間は学校に通えないという制約は――なくなるのか。
「……うーん、でも。犬のすがたのまま学校に通うって……やっぱり、難しくないですか? そもそも通学できる自信がありません」
バイト帰りに変身しただけで事故に遭って、行方不明になる有様だ。
お姉ちゃんも、うんうんと私の言葉にうなずいている。
「まず、毎日の学校への送迎は俺が行おう」
「星夜様! お仕事がどっさりと溜まっていらっしゃるこの時に、そのようなことをされてはお時間が……」
星夜は鋭い目で暮葉さんを睨んだ。
「俺に意見をするな、暮葉」
「……申し訳ありません」
「また、歌子のそばで仕事ができるよう、幽玄学院の敷地に俺の事務所を新しく作らせる」
事務所を、新しく作る……。
あっさり言ったけれど、それって、すごいことだよね。
「さらに念には念を入れ、護衛兼、身の回りの世話をさせる者をつける。夕樹が適任だろう。通学時にはもちろん、クラスやあらゆる授業をともにさせ、不便のないように計らわせる」
「夕樹さん……」
星夜のいない昼間に私を可愛がってくれて、ボールで遊んでくれたり、とてもよくしてくれた同年代のあの女の子。
夕樹さんなら信用できる……。
でも。
「それで、通学ができたとしても。私、呪い持ちなのに。あやかしの学校なんかに行ったら――狙われまくっちゃうんじゃないですか?」
「そのような心配はない」
星夜は、不敵に笑った。
「俺は貴様のもとにいつでも駆けつけられる場所にいる。昼間は幽玄学院で、夜間は夜澄島でいつでも貴様を守る」
「星夜様! 毎日、幽玄学院に通われるのですか? このお忙しいときに?」
「そんなに遠い距離でもないだろう。夜澄島から船を出すようにしろ」
「はあ……そうですか……承知しました……」
暮葉さんはもう、何かを諦めつつあるようだった。
「夕樹の賞賛に値する点は、犬を可愛いと思えるところと、鬼神族のだれよりも力持ちであるところだ。あいつがついているならば、そのへんのあやかしには簡単に負けない」
ぞくっとした。
鬼神族のだれよりも、力持ち……?
あの、線の細い少年のような夕樹さんが?
あやかしという存在は、やはり――人間の理解を、超えている。
だけど、たしかに。
そうやって守ってくれるのであれば……大丈夫、なのかな。


