星夜に天狗たちが襲いかかる。
天狗たちは星夜にふれることもできず、なすすべなく吹き飛んでいく。
「ちょっと、どういうこと? 星夜、強くなりすぎてない? リミッターが外れると……こんなに強くなるわけ?」
永久花の言葉さえ、もう、星夜には聞こえていないようだった。
ただ……近づいてくる敵を……排除していくだけ。
そして、聴覚に優れた私の逆三角形の耳は、風に乗った声をつかんでしまった――。
「歌子……すまなかった……せめてもの罪滅ぼしだ……天狗を……皆殺しに……」
どこか……呆けたような。
ほんとうに、ほんとうに、つらそうな――絞り出すような、その声。
私は、その背中を、まっしぐらに目指す。
もう目立ってしまってもいい。
だって――星夜は、すぐそこにいるから!
ああっ、と永久花が耳をつんざく声で叫んだ。
「あいつ――! どうして。満月でもないのに! 殺しなさい。殺して。すぐに殺して!」
わん、と私は永久花に負けないくらい大きな声で、星夜を呼んだ。
口を開けて、すぐ閉じて、宝剣をしっかりとくわえなおして。そうすれば宝剣をくわえたままでも、声を出せる。
彼は……ゆっくりと……振り向く。
星夜を知らないひとが見たら、冷徹な無表情に見える顔で。
でも私には、涙こそ流していないけれど、泣いているってわかる顔で――。
「歌子……! 歌子なのか?」
わんわん、と私は鳴いて、星夜の足元をぐるぐる回る。
「なぜ。満月ではないのに。いや、それより、どうして来たんだ。早く戻れ。また天狗たちにいじめられてしまう――」
「――犬のほうだけでも殺してやる!」
永久花が、光の矢を降らせる。
でも私は……全部避けた。
「歌子……? 避けられるのか。なぜ……」
星夜の、知らないひとが見れば無表情な顔に――表情が、戻ってくる。
そこにあるのは、戸惑いと……それ以上の、輝く驚き。
「おまえは……すごいな……」
黄見さんの修行がすごいのかも、という照れ隠しを込めて、私はわんわんと鳴いた。
まあ……私もがんばったのはほんとだから、褒めてはほしいかな……。
私は星夜の足元におすわりして、口にくわえた宝剣をアピールした。
「それは……宝剣じゃないか。そうか……と、いうことは、黄見が……」
星夜は――納得してくれたようだった。
気がつけば、鬼神がかなりの優勢になっていた。
私が宝剣をくわえて来たからだろう……。
星夜の霊力も、ますます高まったようだった。
さっきだって、これ以上ないほどに高まっていたのに――。
「……力が満ちてくる」
星夜は、自分の両手を広げて見つめていた。
「できる。できるぞ。これなら一瞬で、天狗たちを……歌子をいじめたやつらを……皆殺しに――」
目で見えるほどの、あまりの霊力の高まりに。
天狗たちは、後ずさるけれど――。
「……くうん!」
私は、ありったけの感情を込めて、鳴いた。
天狗たちは星夜にふれることもできず、なすすべなく吹き飛んでいく。
「ちょっと、どういうこと? 星夜、強くなりすぎてない? リミッターが外れると……こんなに強くなるわけ?」
永久花の言葉さえ、もう、星夜には聞こえていないようだった。
ただ……近づいてくる敵を……排除していくだけ。
そして、聴覚に優れた私の逆三角形の耳は、風に乗った声をつかんでしまった――。
「歌子……すまなかった……せめてもの罪滅ぼしだ……天狗を……皆殺しに……」
どこか……呆けたような。
ほんとうに、ほんとうに、つらそうな――絞り出すような、その声。
私は、その背中を、まっしぐらに目指す。
もう目立ってしまってもいい。
だって――星夜は、すぐそこにいるから!
ああっ、と永久花が耳をつんざく声で叫んだ。
「あいつ――! どうして。満月でもないのに! 殺しなさい。殺して。すぐに殺して!」
わん、と私は永久花に負けないくらい大きな声で、星夜を呼んだ。
口を開けて、すぐ閉じて、宝剣をしっかりとくわえなおして。そうすれば宝剣をくわえたままでも、声を出せる。
彼は……ゆっくりと……振り向く。
星夜を知らないひとが見たら、冷徹な無表情に見える顔で。
でも私には、涙こそ流していないけれど、泣いているってわかる顔で――。
「歌子……! 歌子なのか?」
わんわん、と私は鳴いて、星夜の足元をぐるぐる回る。
「なぜ。満月ではないのに。いや、それより、どうして来たんだ。早く戻れ。また天狗たちにいじめられてしまう――」
「――犬のほうだけでも殺してやる!」
永久花が、光の矢を降らせる。
でも私は……全部避けた。
「歌子……? 避けられるのか。なぜ……」
星夜の、知らないひとが見れば無表情な顔に――表情が、戻ってくる。
そこにあるのは、戸惑いと……それ以上の、輝く驚き。
「おまえは……すごいな……」
黄見さんの修行がすごいのかも、という照れ隠しを込めて、私はわんわんと鳴いた。
まあ……私もがんばったのはほんとだから、褒めてはほしいかな……。
私は星夜の足元におすわりして、口にくわえた宝剣をアピールした。
「それは……宝剣じゃないか。そうか……と、いうことは、黄見が……」
星夜は――納得してくれたようだった。
気がつけば、鬼神がかなりの優勢になっていた。
私が宝剣をくわえて来たからだろう……。
星夜の霊力も、ますます高まったようだった。
さっきだって、これ以上ないほどに高まっていたのに――。
「……力が満ちてくる」
星夜は、自分の両手を広げて見つめていた。
「できる。できるぞ。これなら一瞬で、天狗たちを……歌子をいじめたやつらを……皆殺しに――」
目で見えるほどの、あまりの霊力の高まりに。
天狗たちは、後ずさるけれど――。
「……くうん!」
私は、ありったけの感情を込めて、鳴いた。