ノック音が聞こえた。

あさひとドアの方を見た。


「焼き芋しようぜ!」

…兄貴。
めっちゃくちゃタイミング悪いんだけど。


「碧斗も一緒だろ?サツマイモ買って来たから!」


空気を読んでくれ、今そんな呑気なこと言ってる空間じゃないんだ。

あさひがはぁっと息を吐いてドアを開けた。


「拓海くん、今忙しくて…」

「息抜きも必要だぞ」

「今休憩したし、適度に休んでるよ」

「あさひは根詰め過ぎてる、もう少し力抜いてやらないと潰れるぞ」

「………。」


兄貴がぽんっとあさひの肩を叩いた。
なっと、微笑みかけて。


「……わかった」


それにうんと小さく頷いたあさひ。

一瞬だった。あさひを納得させるのに。


「ほら、碧斗も来い!焼き芋すぐ焼き上がるから!」


そう言われてゆっくり立ち上がる。

なぜだろう、なぜあさひは兄貴の誘いに"うん"って答えたんだろう。

やっと身長も追いついたのに、やっとあさひと同じ目線になったのに…

全然同じ場所にいない。