学校に着くや否やどこからともなくあの声が聞こえてくる。どっから叫び始めるのかわからないほど遠くから、こっちが見付ける方が一苦労だ。


「あああああぁぁぁーおーとぉぉぉーーーー!!!」


太陽が後ろからタックルしようとしたのを軽やかに避けた。


「よけんなよっ!!」

「そんな毎日引っかかるかっ!」


太陽を無視して教室に向かおうとすると、ガシッと肩を組んできた。


「今日もねぇーちゃんと手繋いじゃって、碧斗は甘えん坊なんだな!」


ヒューヒューと耳元で息を吹きかけながら、わざとおちょくるような言い方をしてきた。はぁっと大きなタメ息が出た。

何度言えばわかるんだ、てゆーか何度言われたってその言葉におれが揺らぐはずがない。


「あたりまえだろ。つーか、ねぇーちゃんじゃねーから」

「じゃぁ誰なんだよ?」


太陽の問いに真っ直ぐ見つめて答えた。

揺らぐことのないおれの気持ち。



「"好きな子"」



あさひはおれの好きな子だ。