「マジで人間の女の子だ!? 本物の人間女子だー!」

 興奮した声で、叫ぶように彼は言った。どうやら凛が人間ということに食いついているらしい。

 ――あ、彼は私の血を吸いたいのかな。

 ひょっとすると、初めからこの金髪の彼に血を吸わせるために伊吹は自分をここに連れてきたのかもしれない。

 伊吹の優しい微笑みや行動のすべてが偽りとはどうしても思えなかったけれど、この金髪の男性に吸われて死んでしまう凛に対して、最後に慈悲を与えてくれたのだと考えると納得がいく。

 ――それならば、どうぞ吸ってくださって構わないです。

 いまだに生贄花嫁としての運命から抗う気の起きない凛は、金髪の男性をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えるが。

「やっぱり超かわいい! あやかしの女どもと違って偉そうな感じがないっ。人間女子最高ぉっ!」

 金髪の彼は鼻息を荒くしながら凛に詰め寄り、相変わらず興奮した様子で絶叫した。

「え……?」

 意外な言葉に、凛は呆気にとられる。

 ――超かわいい?

 生まれてこの方、自分に向けられたことがないような褒め言葉を初対面の男性に言われ、脳が理解できず、ぽかんと口を開けてしまう。

 すると伊吹が、金髪の彼を凛から引き離すように押しのけた。

「……ったく。落ち着け、鞍馬(くらま)
「はあ!? これが落ち着いてられるっ? だって人間の女の子だよ! 国茂に聞いて、まさかって思って飛んできたけど、マジで伊吹、人間の女の子嫁にすんの!?」
「マジだが」
「えええ! ずっるーい!」

 伊吹に鞍馬と呼ばれた男性は、心底うらやましそうに言った。

「あ、あの……。えっと……」