「ほんとだよ。だからね、これからは美菜が幸せになる番なんだよ」
「私が、幸せに……?」

 涙を拭いながら、ぼやける視界で香穂を見つめる。

「美菜はつらくて苦しい思いをたくさんしたでしょ。今度は、その分幸せになる番なの」

 そう言って微笑んだあと、「そうだよね、松村くん」隣にいる彼に話を振る。

「うん、そうだよ。今度は山下さんが幸せになる番。たくさん我慢して泣いた分、幸せになる権利があるんだよ」

 かがんで床に膝をつくと、温かい陽だまりのように微笑んだ。

 ……私が幸せになる権利がある?

「だから、これからは幸せになろう」
「そうだよ! 美菜!」

 私にはこんなにも強い味方が二人もいる。

 それがすごく心強くて。

「……ありがとう」

 また、涙が溢れてくる。

 一度栓が抜けてしまった蛇口からは、とめどない水が溢れてくるように次から次へと涙はこぼれ落ちた。

「よーし! 今日は私が美菜の大好きなチョコパフェ特別に奢ってあげる!」

 不意に香穂が満面の笑みを浮かべた。

「松村くんも付き合ってよ!」
「うん、いいよ」
「……え、二人ともなに?」
「今日は、美菜をたくさん甘やかしてあげる。ほら、立って立って!」

 急かすように手を引っ張られる。困惑しながらつられるように立ち上がる。

「美菜、今日は松村くんにたーくさん甘えちゃって!」
「……え?」
「うん、甘えていいよ」
「え、え……?」

 右手を香穂に、左手を松村くんに繋がれる。

 手のひらを伝ってじんわりと優しい温もりが流れてくる。

 二人の表情は、すごく穏やかで、まるで抱きしめられているような心地よさを感じた。