「なんだよ、それ」
困惑したように苦い笑みを浮かべた翔ちゃんを、隣でふふふと笑う明日香さん。
その二人を見て、お似合いだと思った。
私の方が見る目がなかった。
「ねえ、翔ちゃん。最後に一つだけいいかな」
私が突然、〝最後〟なんて言葉を使うから翔ちゃんの表情が一瞬だけ曇ったのが分かった。
「翔ちゃん、今まで私のことたくさん助けてくれてありがとうね。私、すごく心強かったし楽しかった」
翔ちゃんとの鮮やかな記憶が次から次へと蘇る。
懐かしくて、鼻の奥がつんとなる。
「どうした? いきなり……」
「ううん、ちょっと今言いたくなっちゃって。それに私、翔ちゃんに今までずーっと迷惑かけちゃったなぁと思って」
「なんだよ、迷惑って。そんなこと一度も思ったことないよ」
ほら、やっぱり最後まで優しい翔ちゃん。
そんな翔ちゃんのことが、ずっと大好きだった。
でも、今なら言えるよ。
「私、ずっと翔ちゃんのこと追いかけてたけど、それももうやめる。これからは、自分の幸せちゃんと探してみせるから」
「美菜……」
太陽が雲間に入ったように表情が曇る。
やめて、翔ちゃん。私は、そんなふうに悲しませたいわけじゃないんだよ。
「心配しないで。私、こう見えてすごくモテるんだからね!」
だから、私のために悩んだりしないで。責めたりしないで。
二人のこと、ちゃんと祝福するから。
「翔ちゃん、これからは幸せになってね」
自然とこぼれた言葉にリンクするように表情までも緩む。
翔ちゃんのこと、大好きだった。誰よりも、ずっとずっと。
だけど、それも今日で終わり。
私は、私の未来を描く。