放課後、私は自分の決意表明みたいなものを香穂に話した。そうしたら『頑張っておいで』と背中を押してくれた。
 それから翔ちゃんをメッセージで呼び出した。

「翔ちゃん、明日香さん、いきなりごめんね」

 校舎裏に私は二人を呼び出した。

「いや、それはべつに構わないけど……なんで明日香まで?」

 この反応だと明日香さん、私と話したときのこと翔ちゃんに打ち明けてないんだ。べつに話してくれてもよかったのに、明日香さんってば律儀すぎるというか真面目すぎるというか。

「さ、さあ、私にもよく分からなくて……」

 翔ちゃんと明日香さんが二人で廊下を歩いている場面に遭遇したこの前より、ショックはなかった。

「翔ちゃん、これ」

 右手に握りしめたままになっていたシャープペンを手向ける。

「返すのが遅くなってごめんね!」

 私の表情筋は、すごく調子がよくて顔全体が緩んでいた。

「いや、大丈夫だよ」

 私の手から受け取った。

 これを返したら、きっとこうやって翔ちゃんと会うことは減るかもしれない。
 そんな未来を想像するだけで今までなら絶望してた。

 だけど、私たちはきっとどこまでいっても幼馴染みという強い絆は外れたりしない。十年という長い年月をかけて私たちの絆は頑丈になったんだ。

 だからもう、大丈夫。

「それよりもなんで美菜が明日香のこと知ってるの?」

 突飛なことを告げられて、一瞬戸惑ったけど。

「それは内緒。ですよね、明日香さん」

 クスッと笑って、翔ちゃんの隣にいる彼女に話を振れば。

「う、うん、女の子同士の秘密!」

 私の肩を持ってくれる明日香さん。

 ほんの少ししか話していないのに、彼女に対する意識は180度変わった。

 地味で目立たなくて、私の方が可愛いと思っていた。
 だけどそれは全然違っていて。
 控えめでおしとやかな可愛さを持っていて、心がすごく綺麗な人だった。

 見た目だけで判断した自分がすごく恥ずかしくなるほどに。