「……じ、じゃなくて、大切にするから……!」

 先輩なのに、先輩らしからぬ対応。だけど、それは全然嫌悪感なんかなくて、むしろ少しだけ可愛らしい人だと思った。

「私なんかがおこがましいかもしれないけど……翔平くんのこと幸せにできたらなぁ……って思ってる」

 必死に言葉を紡ぐ明日香さん。

 翔ちゃんが選んだわけが少しだけ分かったような気がした。

 だけど、すぐに受け入れることができないのが悪いくせ。

「……もし翔ちゃんのこと裏切ったりしたら、私許しませんからね!」

 明日香さんにビシッと指をさして牽制をしたら、「…う、うん、もちろん」慌てたように頷いた。これじゃあ立場が好転して、どっちが先輩で後輩か分からない。

「約束しましたからね」

 久しぶりに笑えた気がした。

 自然と、心から。

 そのとき非常階段から見えた空は、爽快で雲一つない青空が広がって見えた。

 私の心のもやもやが晴れた瞬間でもあったんだ──。