だって私は、翔ちゃんへの〝好き〟を全面的にアピールしていたから。それに気づかないはずなかった。
それでも、今までそのことに触れなかったのは、幼馴染みという大切な関係を壊したくなかったからだろう。
そんなところも翔ちゃんらしかった。
「……私、ずっと翔ちゃんのことが大好きだった。小さい頃から翔ちゃんのこと追いかけて、いつかは振り向いてくれるって頑張って……ずっと翔ちゃんの隣にいられると思ってました」
気が緩むと、自然と口からこぼれ落ちる。
「翔ちゃんの隣は私の居場所だと思ってた。誰にも譲らないって……だから、彼女ができたって言われたときも絶対に奪い返すって思ってたんです」
ずっと自分のことしか考えていなかった。
翔ちゃんのそばにいられるなら、私はどんなことでもする覚悟だった。
「でも、やっぱり違うなって今思いました」
私の顔を見て目を白黒させてきょとんと固まる明日香さん。
私たちは、対照的すぎる。だからこそ、私は翔ちゃんに選ばれなかったのかもしれない。
「私、翔ちゃんの隣にはふさわしくないです。だってこんなに醜くてひどい考えばかりで…相手の幸せなんて願うことさえできてなかった」
泣きたい感情はどこかに消えた。
小さい頃は、翔ちゃんの隣にいるだけで幸せだった。どんどん成長して大きくなると、好きよりも欲の方が上回って、やがてそれが嫉妬になる。
そんな私は、ふさわしくない。
──だから。
「翔ちゃんの隣にいるのが…明日香さんなら、私、許せるかもしれない」
代わりに、少し清々しささえあった。
「え、え……? ちょっと待って、どうして私の名前知ってるの?」
肝心なところは触れもせず、余計なところに話が逸れるから話しは進まなくなる。
「たまたま知ったんです」
「そ、そうなの……?」
「そんなことよりも翔ちゃんの隣、どうするんですか。嫌なら、今すぐにでも返してもらってもいいんですよ」
「──ううん! 返さない!」
矢継ぎ早に現れたあと、「あっ…」口元を押さえて恥ずかしそうに視線を右へ左へ逸らした。