「翔平くんの話しにはいつも大切な子のお話がでるの。小さい頃から兄妹のように育って、いつも後ろをついてくる可愛くて何よりも大切な幼馴染みがいるって」
「え……」
「それ、きっとあなたのことだよね」

 口元に弧を描いて笑った。

 たった今、告げられた言葉を頭の中で再生させる。

〝翔平くんの話しにはいつも大切な子のお話がでるの。小さい頃から兄妹のように育って、いつも後ろをついてくる可愛くて何よりも大切な幼馴染みがいるって〟

 ……うそでしょ。翔ちゃん。

「その子のこと話すときの翔平くんはすごく優しく微笑むの。きっと、思い出すだけで幸せな気持ちになるんだろうね」

 そんな、だって。私は、翔ちゃんに彼女ができたって言われたときも受け入れられなくて嫌だって駄々こねたし、そのあとも二人の仲を引き裂いてやるって意気込んでたのに……

「……うそ、だ……」

 目尻に涙がじわっと浮かんできて、たまらず両手で顔を覆うとくぐもった声になる。

 胸が張り裂けそうに苦しくなる。

「それとね、もう一つこんなこと言ってたよ」そう前置きをするから、恐る恐る手を退けて顔をあげる。

「最近、みな、元気ない。多分、俺がいきなりあんなこと言ったからだよな……それ知ってるし優しくしてやりたいけど、中途半端な優しさはあとになってつらくなるだろうから……ってそんな自分に腹が立つって言ってた」

 と、太陽が雲間に入ったような表情を浮かべる。

「……なんで、翔ちゃん……」

 知らなかった事実を聞いて、さらに胸が苦しくなった。

 翔ちゃんは何一つ悪くないのに、むしろ祝福されるべきなのに、どうして私のことばかり考えてくれるの。

「みなちゃんって、あなたのことだよね。翔平くん、あなたのことすごく心配してた。きっとそれは、多分あなたの気持ちを……」

 そこまで言うと、口を結んだ。

 だけど、言わなくてもわかった。