学校へ行く前に、いつものように翔ちゃんの家に向かった。
翔ちゃんこと倉田翔平とは、一つ歳上で高校二年生の幼稚園の頃からの幼馴染み。色素の薄い髪の毛は日に当たると茶色がかって見えて、目鼻立ちが整っていてモデルさんのようにかっこいい。
いつも優しく微笑んでくれた翔ちゃんが、今日は違った面持ちだった。いつもなら『おはよう、美菜』って優しく笑ってあいさつをしてくれるのに今日だけは違っていて、声も表情もどこか歪んでいるような気さえした。
「……えっ……い、今、なんて……?」
雷で打たれたような衝撃が走って、頭の中が白く抜け落ちる。
「だから、彼女ができたんだ」
固まる私に再度、説明をする。
「彼女……」
言葉の意味を理解できずに、ぽつりと呟く。
翔ちゃんに彼女……? だって今までそんな素振りなんか見せたことなかったし、一番私を優先してくれてたのに……
「ど、どうして、急に……?」
翔ちゃんに彼女だなんて納得できなかった私は、目を白黒させながら尋ねる。
「急じゃないんだ。美菜には言ってなかったけど、少し前からその子のこと気になっててさ……まぁ、俺の片想いってやつだったんだけど」
照れくさそうに詳細を話す翔ちゃんの横顔は、見たことないくらい幸せそうだった。
〝片想い〟という言葉にさらに私の心はチクリと痛む。
「どうせダメだろうって、振られる覚悟で告白したんだよね」
翔ちゃんの一言一句が、私の心に棘を植えていく。