「―――やっぱり、あれ、影宮だったんだ」
一緒に、並んで、歩く。
彼女の髪が、少し、茶髪に見えるような気がして。
「うん⋯分かった?」
「うん、顔面ボールでしょ?覚えてた」
「⋯そっか」
会話が、続かない。
せっかく話せたんだから。言わないと。言わないと。
オレンジ色の時間が、終わってしまう。
ごめん、って。
黙りこむ、僕に、キミは「変わらないね、影宮」と、懐かしいような笑顔を向けてくる。
「⋯変わらない?」
「うん、優しいとこ」
そう言われて、眉を寄せる。
優しいとこ?
え?
優しい⋯。
優しい⋯?
え?
「知ってたの。影宮、ずっとあたしに謝ろうとしてたでしょ?」
「え⋯」
「あたし、ずっと待ってたから」
にこにこと笑う、その笑顔。
なんで、知ってんの。
誰にも言ってないのに、と。
「謝るのは、あたしの方だよ。黙っててごめんね」
高梨の足が、ピタリと止まった。