その姿にどこか見覚えがあったのは、過去の自分と重ね合わせていたからだ。
こいつも俺も同じで、何かを手放した。それは自分の大切な人を守るために──だ。
「まぁでもこれでよかったんだ。これで……」
まるで自分を納得させるように呪文を唱えるように繰り返す。
だから俺は聞いてみたくなった。一歩、踏み込んでみたくなった。彼らの世界に。
「国崎とは実際どういう関係?」
突飛なことを俺が尋ねるから、きょとんとした顔を浮かべた亮介。しばらくして「ああ」と頷き笑うと。
「──幼馴染みだよ、小学生からの」
一言一句確かめるように言ったあと、清々しい表情を浮かべた。
「その頃からわんぱくな女の子って感じでさ。いつも傷を作って帰って来るようなやつで……まぁ今は昔よりマシになった方なんだけど」
記憶をたぐるようにしてぽつりぽつりと答え始める。
「昔はよく俺がいじめられててさぁ、それを茜音がヒーローのように助けてくれたんだよな。しかもそれが強くてかっこよくてさ」
「……国崎がヒーロー?」
「そんなふうには見えないだろ? でも、小学低学年の頃まではすごい強かったんだよ。男子を泣かすくらいあってさぁ」
埋もれてい古い記憶を呼び起こしながら、紙のように顔をくしゃくしゃにして笑った亮介。
「それに俺の家、片親なんだ。家に帰っても一人だったけど毎日のように茜音が遊びに誘ってくれて、そのたびに茜音の家でご飯まで食べさせてもらってさ。家族同然のように俺のことも接してくれたんだよな」
──悪い、咄嗟に言葉がのどまで出かかった。が、ここで謝るのは何か違う気がした。
「…そう、だったんだ」
だって、亮介は〝それ〟を自分の傷のように思って話しているわけじゃなさそうだったから。過去の一部として、堂々と話してくれた。
だから、俺は〝ごめん〟を飲み込んだ。
「だから茜音にはすごく感謝してるんだ」
俺には知らない十年を、この町で過ごしている。だからきっと、写真部に込める思いも人並みではない。だから彼らは俺に必死に頼んだってことか。