「もしかして国崎か」

 カマをかけてやったら、ますます顔がりんごのように赤くなる。

 ──ああ、図星か。

 ちら、と国崎へ顔を向けると、友人と楽しそうに話をしていた。まさかこんなところで自分が話題に持ち出されているとはつゆ知らず。

「ちょ……あんま見んなって、茜音にバレるだろ!」

 どこまでも正直者らしい。俺とはまるで対照的。場を和ませる才能があって、明るくて男女問わず人気者で。こういうやつは悩みなんか一つもないんだろうな。

「バレたらどうなんの」
「即振られるに決まってるだろ!」

 俺が見る限り国崎と羽田は仲がいい。お互いを下の名前で呼ぶくらいには。心を許していないと高校生ともなると異性のことを名前でなんか呼べない。それなのに二人は当たり前のように呼んでいる。

「言ってみなきゃ分からないことだってあるんじゃないの」

 まぁ俺には一切関係のないことだが。

「幹太おまえ……俺の味方?」

 突然、名前の呼び方が変わるから一瞬頭の中が真っ白になる。
 なんで俺のこと『幹太』だなんて気軽に呼んでるんだ? 俺、おまえの友達だったっけ? なんて一瞬俺も誤解しそうになる。

「なんで俺が羽田の味方しなきゃならないんだよ」

 一方的に友人ムードを漂わせるやつに少しだけ苛立って、頭の芯がチリチリと音を立てる。

 敵も味方もあったもんか。部活以外のことでまともに話したのなんて今回が初めてだというのに、いきなり名前で呼ぶなんて。そもそも俺は羽田のことを友人だと認めたわけではない。

「名字呼びとかやめろよ! 硬っ苦しいだろ?」

 突拍子もない言葉に、一瞬理解が追いつかなかった俺は目を白黒させる。

「ふつうに亮介……でいいし」

 口元に無邪気なあどけない笑みを浮かべていた。

 いい雰囲気を醸し出すところ悪いが。

「……呼ばないし」
「いや呼べよ!」
「なんでだよ」
「もう俺たち親友じゃん!」
「……は?」
「……え?」

 まるで漫才をしているかのような息ピッタリな掛け合いにお互い黙り込んだあと、フッと笑みが漏れる。