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 休み時間、廊下の開けられた窓からむわっと湿り気の風が入り込んで思わず眉間にしわを寄せた。

「昨日はごめんなさいっ!」

 国崎が深く頭を下げた。次いで羽田も。控えめに「悪かった」と。いくら廊下の端だからとこんなことをすれば目立つのは当然のこと。通りすがる生徒は、なんだなんだとどよめきが起こる。

「…やめろよ」

 目立つのは嫌だった。窓の外へ顔を向ける。

「で、でも、昨日私があんなこと言ったから……」

 俺はいつだって部外者でいたい。なんて思うけれど、昨日あれだけのことを言ったんだ。部外者ではいられない。

「ちゃんと高槻くんに説明する。だから聞いてほしいの」

 国崎が意を決したように言葉を紡ぐから、これから何を言おうとしてるのかすぐに分かる。
 すーはーと深呼吸して緊張をほぐそうとしていた。が、一向にしゃべらない。

「茜音、俺が話すよ」

 国崎の肩に手をついた羽田が、代わりに口を開く。国崎は、申し訳なさそうなホッと安堵したような表情を浮かべていた。

「写真部には最低でも四人いなきゃいけないんだ」

 いきなり羽田が喋り出すから、俺もやつへと視線を向けた。

「でも残っているのは、俺と茜音を含めて三人。一人は幽霊部員ってやつで。たまにしか来なくて」

 ああ、なんか漫画か何かでそんな設定のやつ読んだことある。それでたしか続きは……

「今月末までにあともう一人入部しなければ、写真部は今年で廃部になるって」

 ──ほらやっぱり。想像していたものと一ミリの狂いもない。

 今月末までにあと一人獲得しなければ今年で廃部。だから国崎は焦っていたのか。これでようやく謎が解ける。
 栞里が写真部の先輩だと知った。すごく楽しいと言っていた。が、すぐに心変わりできるほど俺は鈍感じゃない。

「悪いけど、」

「──お願い!」

 断ろうと思った矢先、彼女の言葉が俺の声を遮った。そのせいで途中まで出かかった言葉はのどの奥へと押し流される。

「三田くんみたいに幽霊部員でもいいの!」
「は?」
「ううん。部活なんかしなくてもいい。一度も来なくてもいい……ただ、名前だけ貸してくれないかな」

 今にも泣いてしまいそうなほど顔を歪めていた。