「瓶の中に残した言葉の意味……俺に忘れてほしくないってことだよね?」
〝私も幹太くんのことが大好き。これからもずっと……〟
栞里がどんな思いでこれを書き残したのか、それを想像するだけで胸が張り裂けそうだ。
「俺、栞里のこと忘れるわけないじゃん。だって初恋だよ。初めて好きになった女の子だよ……そんな簡単にあっさり忘れられるわけないじゃん……っ」
あんな出会いをして、あんな別れをして。
俺の心の中には朝日栞里──国崎栞里という女の子が強く強烈に残っている。
「これだけ俺の心に足跡残したのは栞里が初めてだよ。多分、最初で最後の恋だと思う」
俺はまだ、高校一年生。十六歳。
人生なんてまだまだこれからだ。あと何十年も歳を重ねる。
それなのにこれが最後の恋だなんてバカげていると思われるかもしれない。
だけど、今の俺にとってはこの恋が特別だった。忘れようと思っても、きっと一生記憶に残っている。どんどん思い出が増えて上書きされたとしても、その想いは一番上に一番新しい記憶として残されていく。
「こんなこと俺が言うのもおかしいけど……」
栞里に届くように。伝わるように。
「──来世生まれ変わって出会ったら、今度こそ俺と恋をしよう」
想いを、願いを、言葉に込めた。
俺にこの町の良さを教えてくれてありがとう。
話を聞いてくれてありがとう。
背中を押してくれてありがとう。
母さんに会ってくれてありがとう。
どうか、安らかに眠れますように。
どうか、穏やかに過ごせますように。
「栞里、また来るね」
俺は立ち上がり、空を見上げた。
線香の煙が空へと上がっていく。
まるで空の向こう側にいる栞里の元へ──
ー fin ー