「写真部に入ってよ!」

 さっきは『写真部なんてどうかな?』と口調的にも柔らかかったのに、今はなかば強制的な口調がやけに引っかかる。顔を逸らすほどまでに俺のことを嫌っていたのに、嫌っているやつにどうしてそこまで部活勧誘を続けるのか。

「なんで」

 気がつけば俺はそんなことを尋ねていた。

「なんでそんなに写真部に入ってほしいわけ?」
「……え?」

 〝もうすぐ期限が近くまで迫ってるんだよ〟
 国崎がそんなことを言っていたことを思い出す。

「期限って一体何のこと」

 重ねて尋ねた俺の質問に視線だけを右に左に動かして「えっとそれは」と口ごもるから、俺は大きくため息をついた。どうやら彼女の口から聞きたい答えは出てこなそうだ。

「写真部に入ってほしいって言うわりには理由は教えてくれない。まぁ教えられたところで部活に入るつもりなんかないけどさ」
「で、でもっ、この学校に来たなら部活に所属しなきゃ」
「それはどうとでもなる」
「……え?」

 『校長先生に掛け合ってくれる』って先生は言っていた。それならわざわざ部活に入ることはない。そんな脅しみたいな勧誘されたって痛くも痒くもない。

「今後俺に部活の勧誘すんのはやめろよな」

 もちろんクラスメイトと仲良くするつもりだってないし、俺の記憶に楽しい思い出なんか必要ない。母さんのためだけにこの街に引っ越して来た。ただ、それだけだ。

「──それでも私、諦めないから!」

 背を向けたとき、そんなことを告げられた。

 そのとき国崎がどんな表情で言っているのかなんて分からなかったけれど、背中に届いた声は泣くのを堪えているような声に聞こえた気がしたんだ──。