「茜音はすごく優しい子なの私知ってるよ。それと同じくらいすごく頑張り屋で、ずっと我慢していたことも知ってる……だけどね、茜音が罪悪感を背負う必要は一つもないんだよ。もう自分のこと許してあげて……私は、茜音が幸せに過ごしてくれる方が嬉しいなぁ」
「そんな…私なんて、全然…なにも頑張ってないよ……」

 二人ともお互いを思い合っていた。
 ただ、些細なことで糸を掛け違えて、それがどんどんどんどん修正が効かなくて何重にも絡まってしまっていた。

 それがお互いの心の中に〝後悔〟という糸を残した。

「私、ずっと見てたよ。茜音が写真部を守ろうと一生懸命頑張ってた姿、誰よりも一番に見ていたよ。その思いがなによりも嬉しくて……ありがとう茜音」

 ひまわりが咲いたように、明るく優しく微笑んだ。

 涙を流し、泣いた。国崎も栞里も。二人とも、子どものように涙を流した。
 それにつられるように俺も、亮介も涙が溢れた。

「……私、これで安心して旅立てる」

 不意に栞里がポツリと漏らす。

 金色の粒が栞里の身体を包み込み、少しずつゆっくりと透けた。

「やだっ、お姉ちゃん……っ!」

 子どものように駄々をこねた国崎。

「ごめんね、茜音」
「やだよ……」
「少しだけ離れるだけだよ」

 そう言うと、口元に弧を描いた栞里。

「私の命がこの世界から消えたあと私はちゃんと生まれ変わる。花になるか虫になるか、猫になるか犬になるか、それはまだ決まってない……でもね、ちゃんと生まれ変わったら、またこの世界に戻って来るから」

 ──生まれ変わってこの世界に戻ってくる、そんな話信じられなかったけれど、今栞里がこの世界にいる。その現象が、それを深くはっきりと肯定した。

「……ほんとうに? 絶対?」
「約束するよ」

 泣きながら、二人は指切りを交わした。

 空の青さと夕暮れのオレンジ色の境い目が幻想的で、この世界の美しさを主張していた。
 どこまでも青い海は、水平線のずっとずっと向こうまで続いていた。
 海の向こうから撫でるように優しい風が吹いて、俺たちの熱を攫って行く。

「茜音、幹太くん、亮介……」

 栞里が全員の名前を呼ぶ。

 みんな、同じくしゃくしゃな顔のまま栞里を見つめた。

「最後に会えてよかった。ほんとにありがとう……絶対…絶対、また会おうね……そのときは、みんな笑顔だよ──…」

 泣きながら、笑った。

 国崎も俺も亮介も、涙が止まらなかった。

「──そのときまでさようなら」

 金色の粒がぱあっと光ったら、目の前全てが眩しくなった。
 最後に見た栞里は、泣きながらひまわりのように明るく照らすように笑っていた。

 どこまでも続く水平線と、青い空がつながっているようで、俺たちと栞里は離れ離れになっても心は繋がっている。そう思ったんだ──。

 それから学校に帰った俺たちは、当然こっぴどくしかられた。そして反省文を書くように言われた。さらに俺だけは、一週間掃除をするように追加の罰が与えられたのだった。