ただ、おれの気持ちだけは伝えなくちゃいけない。あんなふうに言われたままで終われるか。それこそ、中学の時からなんの成長もしてないみたいじゃねえか。

 このまま黙って受け入れたら、きっと美久はこれから先も誤解をし続ける。おれの気持ちも、自分自身のことも。

 もしかしたら今、美久は泣いているかもしれない。
 そんな美久に、今のおれにできることは、ちゃんと伝えることしかなかった。


「あれ」

 決意を固めたところで手が止まった。
 美久の最後の返信を読み直す。

〝無理して観たい映画を我慢することもない〟
〝観たくない苦手な映画を観る必要もない〟
〝本屋をわざわざ避けなくてもいいんだよ〟

 まるで、デートのことを言っているみたいだ。
 あの日のおれの行動を知っているみたいな内容に、え、と声にならない声が出た。なんで知ってるんだ。

 っていうか、読み返してみるとその前の返事もおかしい。
 おれはまだつき合ったとは言っていなかった。告白したことも、はっきりとは伝えていない。そんなことを言えば、タイミング的にやり取りしているのがおれだとバレる可能性があるから。

 なのに、なんで別れたほうがいい、なんて言うのか。

 ノートの美久は、おれがつき合ったことを知っている。そして美久と一緒に出かけて、おれが美久に合わせていたことも。
 話の内容でわからないとも言い切れない。映画の話はノートでしたし、本の話もした。けれど、ここまでかぶるものだろうか。


 ――もしかして、美久は、相手がおれだと知っているんじゃないか?


 おれが気づいたのだから、なにかの拍子に美久が気づいてもおかしくはない。

 じゃあ、いつから。知っていて、なんで美久はなにも言わなかった?

 いや、おれもなんで今まで気づかなかったんだ。
 いくつもの疑問が浮かぶ。

 だからこそ、伝えたい言葉が浮かんだ。


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  無理をしてもウソをついても
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  そばにいたかったんだ
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 たとえそれが、美久にバレバレのかっこ悪い行動だとしても。