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別れたほうがいいんじゃない?
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その彼女は
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あなたにはもったいないよ
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別れたほうがいい
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おれは、これをどういう意味で受け取ればいいのだろうか。
放課後の図書室でノートを見て固まる。
まさか、こんな返事が書かれているとは思わなかった。
これを書いたのは美久だけれど、相手がおれだとは知らないはずだ。知っているはずがない。だから、美久が実際つき合ったおれに対して思っていること、というわけではない、はず。
そう思っているのに、心臓が不穏な音を鳴らしておれの体を揺らしている。
土曜日のデートは、問題がなかった、はずだ。
前のデートは散々だった。
昔のおれは美久ではなく自分にイライラしていたことを思いだした。美久が望むものがことごとく苦手なことばかりで、美久と一緒に楽しむ余裕がない自分にムカついていた。
どうすればいいのかひとりで考えてばかりで、結局手もつなげないまま、それどころか美久の話をまともに聞くこともないまま終わった。
振り返ればフラれるのも当たり前の行動だった。
だからこそ、今回はめちゃくちゃ頑張って準備をした。当日も自分の趣味を美久にバレないように気をつけたし、かわいいとか好きだとか、思ったときはできるだけ口にするようにした。それに、勇気を出して美久の手を握った。
振り払われたらどうしようかと内心めちゃくちゃ怖かったけれど、美久はおれの手を握り返してくれた。
笑ってくれていた。ときおりさびしげな、気遣うような笑みを見せていたのは、好きではないおれに対する同情心からかもしれない。それでも、決して悪い時間ではなかったはずだ。
――考えられるのは、昨日の件しかない。
なんの連絡もなくおれの帰りを待っていたことにも驚いたけれど、突然泣き出した美久に、おれはろくな慰めができなかった。なにがあったのか訊いてもはっきりと答えないので訊かれたくないのかとあまり追求しなかった。
泣いている彼女を目の前にしたらどうするのが正解なんだ。
おれが原因だったのだろうか。
いや、でもすぐに泣き止んで笑っていた。帰りはずっと手をつないでいたし、美久はもう落ち込んでいるようにも見えなかった。
むしろ、すっきりしていたんじゃないか、と。
……どういうことだ。
さっぱりわからん。ちょっと落ち着けおれ。
まず、図書室を出て人通りの少ない階段に腰を落とした。そして深呼吸を繰り返す。パニックが少しずつ落ち着いていく。
よし、考えろ。美久の行動を振り返ろう。
デートはまあ成功したと言っていいだろう。
そして次の日の日曜日はメッセージでのやり取りをした。『また出かけよう』『今度はあそこに行きたい』という会話をして、うまくいきそうだと安心した。
月曜日はたしか、昼休みに美久の教室に行けず会えなかった。ただメッセージはしていたので問題はない。引っかかるのは放課後のことだ。
そして今日は。
……美久が用事があると言って昼休みは会わなかった。
なんの用事か訊かなかったけれど、もしかしておれを避けていた、とか?
外から雨音が鳴り響いている。
バチバチと窓を打ちつけるような雨が、おれの気分を重くさせる。
頭を抱えて大きなため息をつくと、ずんと体が重くなったような気がする。
なんでこんな恋愛に右往左往しているんだろう、おれは。
もっと、それこそみんながイメージするようなおれであれば、こんなに悩むことはないのだろう。スマートに彼女とつき合えたはず。
……そんな自分を、自分ではまったく想像できないけれど。