ちゃんとしたデートをする、というミッションをクリアするまででもいいから!
それまでになんとか美久の好みを把握しなければならない。
姉ちゃんになぜか怒られて、仕方なく自分でいろんな事を調べた結果、わかったのは『なるほどわからん』ということだ。流行りになっているかどうかの判断がおれにはつかない。そのせいで情報が膨大だ。
コアなファンが多くて流行っているものもあれば、アイドルが口にしていたことで広まったものもある。同じようなものがたくさんあっても、なんでもいい、というわけでもないらしい。みんなに広まるころには、もうすでにべつのものが広がりはじめていたりもする。
待っているだけでやってくるものだと思っていた。なにもしなくても情報が入ってくるのが、流行りだと。
でも、決してそんな甘いものではないようだ。かなり感度のいいアンテナとセンスが必要だった。おれにはどっちもないので、苦戦している。
だからこそ、この交換日記で美久の情報をおれにくれ。流行っている小説、というかなり大雑把な説明ではなく、今まで読んで好きだと思った本のジャンルも教えてくれ。
もしかしたら、直接訊いたほうが効率がいいのでは、とも考えた。
昔とちがって今は、学校でも顔を会わせたときは声をかけるようにしているし、ジンがまほちゃんとつき合っているので、文系コースに顔を出したりもしている。だから、話すチャンスはある。
でも、今の美久は素直に教えてくれるんだろうか。
……いや、その前にまずデートの約束をしろよ、と自分に突っ込んだ。
「ジンとまほちゃんっていつ会ってんの?」
図書室から教室に戻ってしばらくしてから学校にやってきたジンに訊いた。
「うわ、景がそういう話するってすげえ!」
ジンよりも先に反応する友人に「うるせえ」と文句を返す。
「いつって、どういうこと? 毎日会ってるし」
「学校で会うだけ?」
「おう。眞帆ちゃん、オレと帰るために結構放課後待っててくれるからな」
でへでへとだらしない顔をするジンに、つい舌打ちをしていまう。
そばにいた友人も同じ気持ちなのか、しらけた目をしていた。
「休日は今週末がはじめてだからなあ。たぶんオレの家でデートかな」
家か。
それは却下だな。おれの部屋にある大量の本を美久に見せるわけにはいかない。もしかしたら姉ちゃんが家にいる可能性もある。余計なことを言いかねない。いや、姉ちゃんは絶対言う。
「なに? 景、悩んでんの?」
「いや、まあ、それなりに」
「へーなんか意外だな。景ならさらっと誘っていい感じのデートこなしそうなのに」
なんだそのイメージ。
「なになに、おもしろそうな話してるじゃん」
会話によく話をする女子がまざってくる。
「女子って今どこにデート行きたい?」
「うはは、有埜くん必死じゃん! いつものクールさはどこいったわけ」
ぎゃははは、と思い切り笑われた。
なんかすげえ、恥ずかしいぞ、これ。
「有埜くんも彼女のことは気遣うんだー。ウケル」
「うけねえよ。っていうか失礼だな」
「教室で告白するくらい大胆なのにねー」
それとこれとは話がべつだ。
「なんだよ、アドバイスくれるんじゃねえのかよ」
「アドバイスねえ。してもいいけど必要?」
「そう思うよねー。有埜くんって、悩まずそつなくこなしそうだし」
なんなんだそつなくって。
おれひとりがわからないらしく、ジンたち男子もほかの女子も「あーわかる」とうなずいた。
「興味なさそうなくせしてポイント押さえてきそう」
「勉強も運動もとくに努力せず上クラスには入るもんね。デートもそんな感じ?」
なるほど。なるほど?
「しっかりツボは押さえそう」
「ツボ?」
盛り上がる女子たちに訊くと「胸きゅんのツボ」と曖昧なツボの話をされた。
「いつ調べたのかわからないけど、イベントとか調べてさー、サプライズで連れて行ってくれたりしてさー。ほしがってたものを誕生日に用意してくれてたり、食べたいお店を予約してくれてたり」
「めちゃくちゃだなー、無理だろ」
ジンがけらけらと笑う。おれもそう思う。そんなの超能力者だ。
「サプライズが胸きゅんのツボとやらなのか?」
念のため確認すると、
それまでになんとか美久の好みを把握しなければならない。
姉ちゃんになぜか怒られて、仕方なく自分でいろんな事を調べた結果、わかったのは『なるほどわからん』ということだ。流行りになっているかどうかの判断がおれにはつかない。そのせいで情報が膨大だ。
コアなファンが多くて流行っているものもあれば、アイドルが口にしていたことで広まったものもある。同じようなものがたくさんあっても、なんでもいい、というわけでもないらしい。みんなに広まるころには、もうすでにべつのものが広がりはじめていたりもする。
待っているだけでやってくるものだと思っていた。なにもしなくても情報が入ってくるのが、流行りだと。
でも、決してそんな甘いものではないようだ。かなり感度のいいアンテナとセンスが必要だった。おれにはどっちもないので、苦戦している。
だからこそ、この交換日記で美久の情報をおれにくれ。流行っている小説、というかなり大雑把な説明ではなく、今まで読んで好きだと思った本のジャンルも教えてくれ。
もしかしたら、直接訊いたほうが効率がいいのでは、とも考えた。
昔とちがって今は、学校でも顔を会わせたときは声をかけるようにしているし、ジンがまほちゃんとつき合っているので、文系コースに顔を出したりもしている。だから、話すチャンスはある。
でも、今の美久は素直に教えてくれるんだろうか。
……いや、その前にまずデートの約束をしろよ、と自分に突っ込んだ。
「ジンとまほちゃんっていつ会ってんの?」
図書室から教室に戻ってしばらくしてから学校にやってきたジンに訊いた。
「うわ、景がそういう話するってすげえ!」
ジンよりも先に反応する友人に「うるせえ」と文句を返す。
「いつって、どういうこと? 毎日会ってるし」
「学校で会うだけ?」
「おう。眞帆ちゃん、オレと帰るために結構放課後待っててくれるからな」
でへでへとだらしない顔をするジンに、つい舌打ちをしていまう。
そばにいた友人も同じ気持ちなのか、しらけた目をしていた。
「休日は今週末がはじめてだからなあ。たぶんオレの家でデートかな」
家か。
それは却下だな。おれの部屋にある大量の本を美久に見せるわけにはいかない。もしかしたら姉ちゃんが家にいる可能性もある。余計なことを言いかねない。いや、姉ちゃんは絶対言う。
「なに? 景、悩んでんの?」
「いや、まあ、それなりに」
「へーなんか意外だな。景ならさらっと誘っていい感じのデートこなしそうなのに」
なんだそのイメージ。
「なになに、おもしろそうな話してるじゃん」
会話によく話をする女子がまざってくる。
「女子って今どこにデート行きたい?」
「うはは、有埜くん必死じゃん! いつものクールさはどこいったわけ」
ぎゃははは、と思い切り笑われた。
なんかすげえ、恥ずかしいぞ、これ。
「有埜くんも彼女のことは気遣うんだー。ウケル」
「うけねえよ。っていうか失礼だな」
「教室で告白するくらい大胆なのにねー」
それとこれとは話がべつだ。
「なんだよ、アドバイスくれるんじゃねえのかよ」
「アドバイスねえ。してもいいけど必要?」
「そう思うよねー。有埜くんって、悩まずそつなくこなしそうだし」
なんなんだそつなくって。
おれひとりがわからないらしく、ジンたち男子もほかの女子も「あーわかる」とうなずいた。
「興味なさそうなくせしてポイント押さえてきそう」
「勉強も運動もとくに努力せず上クラスには入るもんね。デートもそんな感じ?」
なるほど。なるほど?
「しっかりツボは押さえそう」
「ツボ?」
盛り上がる女子たちに訊くと「胸きゅんのツボ」と曖昧なツボの話をされた。
「いつ調べたのかわからないけど、イベントとか調べてさー、サプライズで連れて行ってくれたりしてさー。ほしがってたものを誕生日に用意してくれてたり、食べたいお店を予約してくれてたり」
「めちゃくちゃだなー、無理だろ」
ジンがけらけらと笑う。おれもそう思う。そんなの超能力者だ。
「サプライズが胸きゅんのツボとやらなのか?」
念のため確認すると、