焦っていたのか、いつもよりも文字が大きく、ところどころ手でこすったのかインクが滲んだりかすんだりしている。

 今までなら、それ以上なにも感じなかっただろう。
〝頑張〟の文字を見なければ。

 ……景くんの掌にあった反転していた同じ文字で同じ色。そっと自分の手を当てれば、彼の掌のものは、このノートの漢字とちょうど同じくらいだとわかる。

「え」

 ノートの内容を読み返す。景くんの振る舞いを思いだす。

「え?」

 いや、まさか。

 パチッと頭の中で電気が走ったような衝撃を感じた。いろんなものがつながって、重なって、結ばれて、ひとつ、あり得ない想像が浮かぶ。

 まさか。そんなはずはない。この学校に何人の生徒がいると思うのか。

 でも、一度脳裏に描かれたものは、なかなか消えてくれない。

「そんな、ことって」

 どうしよう。


 もしかすると――ノートの相手は、景くんなのかもしれない。