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  ちょっと勇気出たよ
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  ありがと
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  あんたはどんなやつが好み?
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  参考までに
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  うーんどうだろう
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  言葉にしてくれる人がいいな
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  なに考えてるか
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  わかりやすい人だと いいな
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  そしたら 安心できるでしょ
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  だから そうじゃない人は やだな
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 あたしは、わかりやすい人がいい。

 なにを感じているか、どう思っているか、あたしを、どんなふうに見ているか。
 いやなことは知りたくないけれど、それでも、わからない不安よりもいい。
 だって、人の気持ちはわからないんだもの。だから、ちゃんと伝えてくれる人がいい。――陣内くんのように。

「眞帆ちゃん、土日はなにしてる?」
「もし時間あるならオレと出かけたりしない?」
「っていうか今度、お昼一緒に食べない?」

 お昼ご飯を食べてから図書室に行き、すぐに返事を書いて教室に戻ると、あたしが座っていたはずの席に陣内くんがいた。そして、目の前の眞帆と楽しそうに話をしている。
 なんという露骨なアプローチ。教室にいる全員が陣内くんの気持ちを察していることだろう。

 っていうか、なんか一気に距離を縮めてきたな、陣内くん。

 眞帆はかわいくて男子にモテる。あたしにはわからない世界だけれど、それはそれで大変らしく、男友だちとは仲良く話をするのに、自分に好意を抱く人に対して眞帆は結構辛辣な物言いをするときがある。
 でも、陣内くんに対してはそうじゃない。

「オレ、実は料理できるからお弁当作ってくるし」
「え、ほんとに? 食べてみたい!」

 陣内くんと話しているときの眞帆の笑顔が柔らかいのは、彼がまっすぐだからだろう。そんなところに、眞帆はきっと惹かれている。

 っていうか、実はもうつき合ってるんじゃないの? というくらいの雰囲気だ。

 ……知らないあいだにつき合うことになったりしてないよね?

 首を捻って見つめていると「あ、戻ってきた!」と眞帆があたしに気づいて手を上げる。お邪魔じゃないかと思いつつ近づくと、「よーっす」と陣内くんも親しげにあたしに笑ってくれた。

「どこ行ってたの? 美久、最近よく姿消すよね」
「そうかな?」

 眞帆の言葉をへらりと笑って交わし、ふたりのそばのイスに腰を下ろす。

「ねえ、美久も行く? 明後日の日曜日に遊びに行く話してるんだけど」
「え? あ、あたしも?」

 突然の誘いにちらりと陣内くんを見ると、彼は少しショックを受けた顔をしていた。おそらく、というか当然、ふたりで出かけたかったのだろう。

「えーっと」

 どう考えてもあたしは邪魔なので、断るしかない。
 用事がある、とウソを吐くか、ふたりで行きなよ、と笑って言うか。

 いや、でも……眞帆はそんなに鈍感じゃないはずだ。ふたりで出かけたくない、という理由ではないだろうけれど、陣内くんの気持ちをわかったうえで、あえてあたしを誘っているのなら、今回は一緒に行くべき?

「有埜くんもさそって四人で行こうよ」

 それは、無理!
 危ない! いいよって返事をするところだった!

「美久もちょっと慣れてきたでしょ? 有埜くんとしゃべってたじゃん」
「いや、いやいや……」

 たった一日で慣れるわけがない。昨日は景くんと〝この場を気まずくさせない〟という共通の目的があったから話をしていただけ。これ以上景くんと接点を持つ気はない。四人で出かけるとか絶対に無理だ。っていうかいやだ。だめだ。

 ただでさえ、昨日からずっと景くんのことばかり考えてしまって、心が落ち着かない状態なのに。

 景くんだって、同じ気持ちのはずだ。

 ――『おれらの過去のことは忘れて過ごそう』

 昨日のセリフを思いだし、やっぱり気にしているのはあたしだけかもしれない、と思い直す。景くんはきっと、ずっと前から忘れて過ごしていたのだろう。