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彼氏ができるといいですね
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でも 誰でもいいとか言ってると
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変な男に捕まりますよ
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あと ノートに名指しで
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悪口はやめといたほうがいいですよ
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本人に見られるかもしれないし
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本人です、と言わないだけやさしいと思う。
まあ、人のノートに勝手に書き込むのはどうかと思うけれど。でも、若干ムカついたからコメントを書いたものの、前半は本音だ。
誰でもいいという考えで、つき合うべきじゃない。ちゃんと相手を見て、相手に見られて、お互い好きになってつき合うべきだ。
なんてことを友だちの前で口にしたら『お前真面目かよ』『夢見すぎ』と茶化されるのだけれど、おれは心底そう思っている。
一度、失敗したからこそ、そう思う。
いや、一度じゃないな、二度か。
そう考えると、このノートの持ち主の〝有埜景はだめ〟というのは正しい意見なのかもしれない。持ち主がおれのなにを知っているのかはわからないが。
胸ポケットに、本を読むときの栞がわりにしている水色の付箋が入っていたので、書き込んだ部分にぺたりと一枚貼りつけた。これで、誰かがこのノートを見た、と持ち主には一目でわかるだろう。
「ほんと、誰なんだか」
ひとりごち、ノートをぽんっと元あった場所に置く。
持ち主が気にならない、といえばウソになる。けれど、知らないほうがいい。知ったところで、いいことなんかなんにもない。
そのためにも、ノートに書き込みをしたのが有埜景本人だとバレないようにさっさとこの場を離れよう。そう思い、そそくさと受付で手にしていた文庫本の貸し出し手続きをして廊下に出た。
文庫本をズボンの後ろポケットに突っ込んで、教室に向かう。けれど、その前に渡り廊下の自販機でなにか飲み物を買おうと階段の手前で方向転換した。
文系コースの校舎と唯一つながっている一階の渡り廊下に出て、視線を中庭の木々に向けながら歩いた。
心地よい風が、おれの髪の毛を揺らす。
十一月になって、ずいぶんを過ごしやすい気候になった。ブレザーを着てちょうどいいくらいの涼しさだ。
秋は好きだ。暑いのも寒いのも好きじゃないし、春はなんとなく視界が華やかで落ち着かないから。
でも、秋にはあまりいい思い出がない。