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ホントそうだよね
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好かれることで自分に自信がほしいけど
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ダメダメでヘタレで臆病者のあたしを
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好きになるわけないって
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わかってるんだよなあ 本当は
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だから余計に彼氏がほしい!
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って思うのかも
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「あー、疲れたー」
体育館の更衣室を出て、眞帆がぐいっと背を伸ばしてぼやく。
「四時間目の体育ってしんどいよねえ」
「わかる」
授業が終わってから更衣室で着替えることになるので、昼休みが少し短くなってしまう。損をした気分だ。それに運動直後なので体がだるいし食欲も出ない。
今朝図書室に置いてきたノートに返事があるか見に行きたかったけれど、放課後まで我慢しなければいけないのも、テンションが下がる。
やり取りをはじめて三日。たった三日なのに、なんだかずっとこうしてノートで会話をしているみたいな感覚だ。
お互い素性を知らない相手と交換日記は、すごく楽しい。
ちょっとしたゲームみたいな感じがする。誰だかわからないから、どんな返事があるのか予想がつかないというのもいい。
でも、いつまで続けられるんだろう。いつか飽きて返事をもらえなくなる可能性はじゅうぶんにある。でも、できることなら、もうしばらくこの不思議な交換日記を続けたいなあ。
まわりや相手を気にすることなく自分の想いを吐き出せるなんて、なかなかできない。誰にも見られない場所に書き殴るのとはまたちがったすっきり感がある。
「そういや美久、浅香はどこ行ったの? 気がついたらいなかったけど」
「彼氏とお昼だって。急いで着替えて出ていったよー」
「ほんっと、友だちより彼氏優先よねえ、浅香ってば」
「それ言うと、当たり前じゃん、て言われるよ」
なに言ってんの、と不思議そうな顔をする浅香が容易に浮かぶ。
「ムカつくー!」
眞帆とそう言いながらケラケラと笑った。そして話はすぐに浅香のことから、あたしが最近買ったスマホケースの話題にかわる。
最近ネットで見かけた新商品だ。入手が困難な人気商品で、眞帆には偶然買えたと言っているけれど、実際にはオンラインの発売情報を仕入れて、予定時間の五分前からスマホを握りしめてスタンバイをしていた。かわいいものオシャレなものを持ち歩いていると、気分があがるのがいい。
流行りが好きなミーハーな部分をなんとか隠そうとはしているけれど、我慢できなくて手に入れてしまうのは仕方がない。昔に比べたらまだマシになったし、眞帆たちに悪く言われることもないので、適度なら大丈夫なのだろう。
どこで買ったのか、いくらだったのか、と語りながら渡り廊下を進み、文系コースの校舎に入ろうとしたとき、
「あ」
と背後から誰かの声が聞こえて眞帆と同時に振り返る。
その瞬間、喉がひゅっと音を出した、気がした。
……なんで。
なんで陣内くんと――景くんがいるの!
同じ学校なので、この前のようにすれちがったり、目が合ったりすることはある。けれど、こんなふうに向かい合うのははじめてのことだ。
え、なんで急に話しかけてくるの? 今までそんなことなかったじゃん! なに!
っていうか、話しかけてきたよね? 気のせい?
目を見張ったまま固まるあたしを、景くんはちらりと見てすぐに目をそらした。
あからさまに避けられて、きゅっと唇を噛む。
「ああ、陣内くん」
あたしの様子に気づかない眞帆が、親しげに名前を呼んで手を上げる。
「え、眞帆、知り合い?」
「昨日話しかけられたって話したでしょー」
そういえば言ってたな。でも、話しかけられるほど親しくなったとは知らなかった。たまたまぶつかったか、ものを拾ったか、くらいだった気がするのだけれど。
疑問に思っていると、眞帆に近づく陣内くんの表情を見て謎が解ける。
どうやら陣内くんは眞帆に一目惚れしたらしい。眞帆が彼のことを〝かわいい〟と言っていたのも、この顔を真っ赤にした姿を見てのことだったのだろう。
「もしかして四時間目体育だった?」
「そうそう。よくわかったねえ」
「なにしたの?」
陣内くんは、眞帆しか見ていなかった。眞帆もまんざらではなさそうな雰囲気なので、もしかしたらいい感じになるんじゃないだろうか。自分に好意を示す男子には結構素っ気ない態度を取る眞帆がこんなに笑顔なのは珍しい。それに、並んでいるふたりはなかなかお似合いに見える。
いいじゃんいいじゃん、と内心にやにやしていると、視界のすみに景くんがいることに気づく。
いや、だめだ! つき合うのは勘弁してほしい!
だって……陣内くんのそばに景くんがいるんだもの!
この状況もなかなか気まずい。
眞帆と陣内くんは楽しげに話し込んでいる。先に帰ってもいいかと眞帆に聞きたいけれど、あいだに割って入るようで、気が引ける。でも無言で先に教室に帰るわけにもいかない。
どうしたらいいのかわからず、とりあえずその場に突っ立っているしかできなかった。景くんも同じなのか、ただ、陣内くんのそばにいる。
居心地が悪すぎて息が詰まる。