言われてみれば、陣内くんは眞帆の好みに一致するかも。眞帆はアイドルのような〝かわいい〟ではなく、ギャップのかわいさが好きなのだとよく熱弁している。
……いや、陣内くんはかわいいのか? 顔の濃い男子だけど。あたしにはよくわかんないけど、まあそれはいいとしよう。
「なんか素直そうでちょういいじゃん。前から陣内くんのことは知ってたけど、あんなふうにかわいいなんて知らなかったよー。なんかピュアな感じ!」
眞帆がこんなふうに男子を褒めるのははじめてだ。
男子と気さくに話はするが、好意を向けてきた男子に対しての眞帆はかなり辛辣なところがある。痴漢やナンパはもちろん、告白されるのも飽き飽きしているらしく、うんざりだとよく舌打ちをしている。
そんな眞帆が、こんなふうに男子に興味を持つなんて。
彼氏がほしいと言いつつ、告白はすべてお断りしていたから、本音は誰ともつき合う気はないのかと思っていた。
「美久、陣内くんと同中でしょー。なんかこう、ないの?」
「い、いやいや、無理だよ」
ぶんぶんと首を左右に振る。
理系コースの陣内くんとあたしは小学校中学校が同じだ。背が高く、中学時代はサッカー部のゴールキーパーを務めていた陣内くんは、めちゃくちゃかっこいいわけではないけれど、いつも笑顔でそれなりに女子から人気がある。
ただ、彼には惚れっぽいという欠点がある。惚れたときにかなり猪突猛進になる、という欠点だ。まわりの目を気にせずにぐいぐい押しまくるので、相手が引いてしまい、今まで彼の片想いが成就したことは一度もない、はず。
中学校一年までは顔を合わせれば挨拶をし、話をする、友だちのような関係だった。
けれど、今はまったく接点がない。
だから、眞帆に協力することができない。
「っていうか、陣内くんって、有埜くんとも仲良くなかったっけ?」
友人のセリフに、体がびくん、と反応する。
「そういえばよく一緒にいるよねー」
「眞帆、陣内くんと仲良くなったら有埜くん紹介してよ」
「っていうか理系コースの男子なら誰もいい」
「でもあの辺のグループ女子もいるじゃん。いい関係の相手いるんじゃないのー? 見てて羨ましいわー。あのグループにまぜてほしいー」
だよねえ、と話す眞帆たちの会話に、ははは、と笑うことしかできなかった。
景くんとか、陣内くん以上に無理!
景くんとは絶対関わりたくない。
文系のあたしたちは、なんとなく理系に憧れがある。クラスに男子が少ないのも関係しているのだろう。その気持ちはあたしにもわかる。
それに、景くんは理系コースの中でも目立つくらいにはかっこいい。昔から、女子に人気あったくらいだ。
実は、昔、景くんとつき合っていたんだ、と眞帆たちに言ったら、どれだけ驚かれることだろう。眞帆たちだけじゃない、同じ中学校に通っていた誰もがびっくりするに違いない。だって、一度も、誰にも、言っていないのだから。
もちろん、今後も絶対、言わないつもりだ。
それに、今はどちらかと言えばきらいな相手だし。
いっつも澄ましていて、堂々としているところが、好きじゃない。嫉妬してるだけかもしれないけれど、でも、きらい。
「ま、わたしは彼氏がいるから関係ないけどね」
理系コースで誰がかっこいいか、という話をしていた眞帆たちに、浅香がふふんと胸を張って自慢げに言った。演技だとわかっているので
「うわ、自慢?」
とあたしが顔をしかめると「やだーごめんねえ」と浅香はケラケラと笑う。
「はいシケた。彼氏持ち自慢うざー」
「ごめんねー。中学からの彼氏と今も仲良くてごめんねー」
眞帆も眉根を寄せる。浅香はこうして眞帆をからかうのが好きらしく、眞帆が拗ねるといつも楽しそうにしている。その様子に、あたしも声を出して笑ってしまう。
すらりとしたモデルのようなスタイルに、少し気の強そうなかっこいいきれいな顔立ちの浅香は、性格もさっぱりしている姉御肌だ。そして、彼氏は浅香よりも背が高く、やや痩せ型のすごくやさしそうな男子だ。同い年とは思えないほど大人っぽい落ち着いた雰囲気があり、ふたりが並ぶ姿はすごく素敵だ。
ふたりは、同じ中学校出身で、卒業前につき合い、同じ高校に通っている今は登下校もお昼も一緒に過ごしている。
誰もが羨む仲の良さだ。浅香が自慢をするのも、そしてそんな浅香に眞帆が嫉妬をするのもわかる。
もちろん、あたしにとっても浅香と彼は理想の恋人同士だ。
「ああ、あたしも彼氏ほしいなあ……」
はーあ、とため息まじりに口にする。と、ふたりは「はいはい」と呆れたように言う。あたしが彼氏をほしがるといつも同じ返事だ。
……あたしってそんなに彼氏できそうにないのだろうか。
……いや、陣内くんはかわいいのか? 顔の濃い男子だけど。あたしにはよくわかんないけど、まあそれはいいとしよう。
「なんか素直そうでちょういいじゃん。前から陣内くんのことは知ってたけど、あんなふうにかわいいなんて知らなかったよー。なんかピュアな感じ!」
眞帆がこんなふうに男子を褒めるのははじめてだ。
男子と気さくに話はするが、好意を向けてきた男子に対しての眞帆はかなり辛辣なところがある。痴漢やナンパはもちろん、告白されるのも飽き飽きしているらしく、うんざりだとよく舌打ちをしている。
そんな眞帆が、こんなふうに男子に興味を持つなんて。
彼氏がほしいと言いつつ、告白はすべてお断りしていたから、本音は誰ともつき合う気はないのかと思っていた。
「美久、陣内くんと同中でしょー。なんかこう、ないの?」
「い、いやいや、無理だよ」
ぶんぶんと首を左右に振る。
理系コースの陣内くんとあたしは小学校中学校が同じだ。背が高く、中学時代はサッカー部のゴールキーパーを務めていた陣内くんは、めちゃくちゃかっこいいわけではないけれど、いつも笑顔でそれなりに女子から人気がある。
ただ、彼には惚れっぽいという欠点がある。惚れたときにかなり猪突猛進になる、という欠点だ。まわりの目を気にせずにぐいぐい押しまくるので、相手が引いてしまい、今まで彼の片想いが成就したことは一度もない、はず。
中学校一年までは顔を合わせれば挨拶をし、話をする、友だちのような関係だった。
けれど、今はまったく接点がない。
だから、眞帆に協力することができない。
「っていうか、陣内くんって、有埜くんとも仲良くなかったっけ?」
友人のセリフに、体がびくん、と反応する。
「そういえばよく一緒にいるよねー」
「眞帆、陣内くんと仲良くなったら有埜くん紹介してよ」
「っていうか理系コースの男子なら誰もいい」
「でもあの辺のグループ女子もいるじゃん。いい関係の相手いるんじゃないのー? 見てて羨ましいわー。あのグループにまぜてほしいー」
だよねえ、と話す眞帆たちの会話に、ははは、と笑うことしかできなかった。
景くんとか、陣内くん以上に無理!
景くんとは絶対関わりたくない。
文系のあたしたちは、なんとなく理系に憧れがある。クラスに男子が少ないのも関係しているのだろう。その気持ちはあたしにもわかる。
それに、景くんは理系コースの中でも目立つくらいにはかっこいい。昔から、女子に人気あったくらいだ。
実は、昔、景くんとつき合っていたんだ、と眞帆たちに言ったら、どれだけ驚かれることだろう。眞帆たちだけじゃない、同じ中学校に通っていた誰もがびっくりするに違いない。だって、一度も、誰にも、言っていないのだから。
もちろん、今後も絶対、言わないつもりだ。
それに、今はどちらかと言えばきらいな相手だし。
いっつも澄ましていて、堂々としているところが、好きじゃない。嫉妬してるだけかもしれないけれど、でも、きらい。
「ま、わたしは彼氏がいるから関係ないけどね」
理系コースで誰がかっこいいか、という話をしていた眞帆たちに、浅香がふふんと胸を張って自慢げに言った。演技だとわかっているので
「うわ、自慢?」
とあたしが顔をしかめると「やだーごめんねえ」と浅香はケラケラと笑う。
「はいシケた。彼氏持ち自慢うざー」
「ごめんねー。中学からの彼氏と今も仲良くてごめんねー」
眞帆も眉根を寄せる。浅香はこうして眞帆をからかうのが好きらしく、眞帆が拗ねるといつも楽しそうにしている。その様子に、あたしも声を出して笑ってしまう。
すらりとしたモデルのようなスタイルに、少し気の強そうなかっこいいきれいな顔立ちの浅香は、性格もさっぱりしている姉御肌だ。そして、彼氏は浅香よりも背が高く、やや痩せ型のすごくやさしそうな男子だ。同い年とは思えないほど大人っぽい落ち着いた雰囲気があり、ふたりが並ぶ姿はすごく素敵だ。
ふたりは、同じ中学校出身で、卒業前につき合い、同じ高校に通っている今は登下校もお昼も一緒に過ごしている。
誰もが羨む仲の良さだ。浅香が自慢をするのも、そしてそんな浅香に眞帆が嫉妬をするのもわかる。
もちろん、あたしにとっても浅香と彼は理想の恋人同士だ。
「ああ、あたしも彼氏ほしいなあ……」
はーあ、とため息まじりに口にする。と、ふたりは「はいはい」と呆れたように言う。あたしが彼氏をほしがるといつも同じ返事だ。
……あたしってそんなに彼氏できそうにないのだろうか。