長い間、自学を小説にしていてだいぶ結末も終盤に近づいてきたということで今日一気に完結させることにした。ということで半ば強引に終わりの方向へ持っていく。ざっと一時間ほど経った頃、
「出来たー!」
やっと終わったのである。長い長い物語が。想像以上に長編を書くというのは大変なことだったけどその分、達成感も大きくて自分なりに良く出来たと思う。明日これを見せたら先生はなんて言ってくれるだろう。なんだかウキウキしてきた。明日になるのがすごく楽しみでならない。こう思うのはいつぶりだろう。本当に毎日が楽しい。
「華花さん!」
ノートを見終わった先生が、昼休みにわざわざ手で持ってきてくれた。
「これ、本当に最高だったよ!」
「ありがとうございます!」
自分の席に行ってノートを開く。先生は私の書きかけのノートを汚すまいと赤ペンを入れるのをやめていてくれた。そしてどこかでコメントを期待しながら最後のページまで捲る。
【もうハッピーエンドかと思いきや…ってところが感動しました。本気で小説家を目指してみてはどうですか?お疲れ様でした!  小説家、倉坂華花のファンより】
一言感想があればいいなと思っただけなのに。先生はいつも私の想像を超えてくる。しかも最後の文章なんて…もうすごい。心臓の音がうるさいけど心の叫び声も大きい。
やったぁぁぁぁぁぁぁ!
今日は特にハッピーな一日だった。
その後帰宅したが、この小説のことを話した人は他にいないのでこれは私と先生だけのこととしてあえて嬉しさを胸にしまっておいた。


翌日。昨日はあんなに嬉しいことがあったのに時間はどんどん過ぎていってしまう。すごく白熱した運動会も無事終わり、最初で最後の選手リレーにも出られてクラスにはやり切った感が漏れ出ていた。
「みんな、竹ってどうして細いのにあんなにまっすぐ立っていられるか知ってるか?」
先生の話の場面で突然そんなことを話し始めたわけだからみんなポカーンとしている。それでみんなが知らないとわかっただろう先生は話の続きを話し始めた。
「なぜかというと、節がちゃんとしてるからだよ。」
「節?」
みんなそう思っただろう。
「この『運動会』という大きな行事が終わったからこそ節目を大事にしろ!」
またしても名言。こんなことが前にもあった。
 
「みんなには炭のようになってほしい。」
「炭?」って誰もが思っただろう。これからなんの話が始まるのか。
「炭は一見もう燃え尽きてしまったかもしれないと思っても、もう一度息を吹き変えればまた激しく燃え上がるものだ!だから、一度クラスの雰囲気が下がった時でも完全に燃え尽きるな!」
一見格好付けの言葉のように思うがその中にはちゃんとした意味が込められている。それを感じ取ったのはおそらく私だけではない。それからというもの、みんなそれがグッときたのかもう一度、まさに炭が燃え上がったかのように力を振り絞っていった。やっぱり先生の存在はとても大きいものだ。

あの時私自身もグッときたことを思い出して他にはどんな言葉を教えてくれるだろうと思うくらいだった。その後、人生には大きなハードルがある。でも、そのいくつものハードルを遠回りしていてはいつまで経っても成長していかない。自分の限界を自分で決めるな!とか、楽しむことはすなわち『熱くなること』だ!とかいろんな名言が毎日のように飛び交っている。しかしそれは決して重く苦しいものではなく、先生の生き方がそのまま反映されてクラスに届いている、いわば架け橋のようなものであった。先生自身の名言なのだから、どこか知らない人が考えた名言よりも信憑性がかなりある。その根拠こそが先生自身なのだから。
今の六の一は確実に前に進んでいるだろう。