今日は、樋口先生が朝から
「ドッジボールが好きじゃない子も絶対に俺が好きにさせます!」
と豪語していて、そういえば今までの六年生もよく樋口先生と休み時間に遊んでいたことを思い出した。あまり見てはいなかったけど楽しそうだったことは覚えている。
その日、私たちは、クラス全員でドッジボールをして遊んだ。チームは、男子と女子で分かれていたのでそれなりのハンデはつけてもらえた。でも、残念ながら女子はボロ負け。
「最初は女子の方が弱いけど、卒業する頃には女子の方が強くなっていることだってあるんだぞ!だから、大丈夫!」
そうやって励ましてくれたおかげで、どんよりした空気も元に戻っていった。
「そうだ!男子だって女子に負けないように鍛えなきゃ!」
「女子だって、絶対に男子に勝ってやるから!」
クラスの盛り上がりは最高だった。

でも、先生はただ私たちを楽しませてくれるだけじゃなくて授業にももちろん力が入っている。分からないところがある子には個別で教えてくれることだってあるし、間違えた子にはわかるまで教えてくれる。教師としては当たり前なのかもしれないがすごくわかりやすい授業だ。
給食も数分で食べ終わってよくパソコンを触っているのを見るからもしかしたら、授業の準備をしてくれているのかもしれない。だから、わかりやすくもあり面白くもある。たまにボケを入れてくるところが面白い。やっぱりそういう先生は裏に努力があるからこそなのかな。
そうやって、クラスのことを考えてくれるのは自分たちも居心地がいいと初めて感じた。
学活が多いのもきっとクラスをよくしたいからこその行動だ。

今日は、先生がみんなのことを知りたいからと個人面談が急遽されることとなった。話してみたいという気持ちはあるのだが一対一で話すというものは私にとって嫌でしかなかった。ああゆう一対一の空間は苦手だし大体うまく話せない。変な失敗をしないか心配だ。
「次、華ちゃんの番だよ。」
出席番号順なので前の番の子に呼ばれて隣の空き教室に行く。
「華花さんは、前の学年の先生からよくできる子だと聞いています。是非リーダーをやってみませんか?」
やっぱりこの空気は無理だ。今にも逃げ出したい。先生には見えない位置で両手に力を入れる。手が震えているのが分かったから。
「今は…そういうつもりはありません。」
「そうですか。じゃあいつでもやりたい時は言ってください。相談に乗ります!」
「…ありがとうございます。」
あと少し今の環境について聞かれただけで終わった。リーダーをやらないかと言われて、やらないと答えたけど先生は何も嫌な顔はしなかった。私の意見を尊重してくれていた。それが、嬉しかった。もしかしたらこの先生はただの『熱血教師』じゃないのかもしれない。