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──あなたの一番の思い出はなんですか?
そう聞かれた時、僕は、
「中学校の三年間です」
ときっと答えるだろう。
一年目で見た、現実。
どれほど、自分が弱い人間かを知らされた。
二年目で知った友情と後悔の味。
唯一無二の後輩である澄春が、親友になってくれた喜び。
そして、澄春の想いの人である波葵と付き合って、すぐに別れてしまったこと。
三年目で感じた儚い時間。
中学の三年間なんて、永遠の時間のように感じていた。
きっと、僕以外にも、そうだったのだろう。
だから、皆、こんなにも涙を流している。
僕は、どうすれば、いいのだろうか。
三年間、感じたことが多すぎて、泣くに泣けない。
嘘だ。
本当は、すごく泣いている。
小さい子供のようにみっともなく、泣いている。
これは、僕が紡ぐ卒業の物語だ。
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